偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理

とある駅前交番の警察官だが、推理力はズバ抜けている部分もあるが、実は「訳あり」とも呼ばれている警察官である。

その警察官の名が本書のタイトルになっている狩野雷太、そして彼が所属している交番が神倉駅前交番である。本書はこの警察官の周囲で起こった事件、そして狩野雷太自身が推理した物語を5編収録されている短編集である。

一見小さい事件のように見えて、実は大きな事件のきっかけとなるようなものだらけであり、その細かい証拠ややりとりの中で解決を導き出す描写はまさに「見事」としか言いようがない。しかも「細かい」と言うところがかなりキーポイントとなっており、普段の推理だと、一つの証拠で解決できるものが実は罠、あるいはさらなるトリックや凶悪事件に発展するきっかけにもなってしまうのだが、それですらも見抜いてしまう慧眼と、その理由もキチンと映し出している。

本書の帯に「あなたは5回、必ずだまされる」とあるが、実際に読んだ私も2~3回だけだったがだまされた。