南海の翼 ─長宗我部元親正伝

戦国時代には全国的に数多くの大名が生まれた。北から順に伊達政宗、上杉健信、武田信玄、徳川家康、今川義元、織田信長、豊臣秀吉と枚挙を挙げるだけでも暇がないほどである。

本書は土佐藩の盟主、長宗我部元親(ちょうそかべもとちか)であるが、私は僭越であるが本書に出会うまで全く知らなかった。

ここで「長宗我部元親」について説明する。土佐国の戦国大名である長宗我部氏の第21代当主であり、生まれた当時は土佐の国人の一つに過ぎなかった。当主となってからは瞬く間に土佐を統一、さらに阿波・讃岐・伊予へと侵攻し四国の統一を遂げた。しかしその中で織田信長との対立を生み、信長の遺志を受け継いだ豊臣秀吉の軍門を下り、晩年は秀吉の家臣として一生を終えた。「鬼若子」と呼ばれるほどの強さがある一方で、片意地を張り続けていたことにより、折角の築き上げた武功も失った引き金ともなった。

本書は知られざる長宗我部元親についてを創作ではあるが、長男である信親の視点から綴った一冊である。長宗我部元親を知らない私にとってもすっと頭に入っていけると同時に、土佐をこよなく愛しつつ、長宗我部家の名誉を広げるための侵攻と自らの仁義を大事にするがごとく織田信長との対立を起し、そして豊臣秀吉らによって滅亡に追い込まれた栄枯盛衰の姿がそこにある。そう言える一冊であった。