時間は存在しない

「時間」と言う概念は、哲学的にも長い間問われ続けている命題である。もっとも私たちの生活の中で「何時何分何秒」というように多かれ少なかれ「時間」を意識しながら生活を送っている。その生活についてどのようにとらえるべきか、哲学者によってもまちまちである。

そこで本書である。本書は物理学的な観点から時間そのものは存在しないことを主張している。なぜ時間は存在しないのかその根拠を掘り下げている。

第一部「時間の崩壊」

時間の流れをどうとらえるのか、それは人それぞれである。もっと言うと動物によっても変わってきており、なおかつ場所によっても変わってくる。「場所」は地球上では「時差」が存在しており、なおかつ宇宙になってくると、時間そのものの概念が存在するのかどうかという疑問も出てくる。

第二部「時間のない世界」

決していつも忙しない世界を指しているわけではない。時間という「概念」がなくなった世界はどのようなものかを表している。もっとも時間というものではなく、「出来事」として構成されていることを著者は指摘している。たとえば「日の出」「日の入り」や、太陽の角度や月の角度などによってあたかも「時間」としてとらえると言うのもある。

第三部「時間の源へ」

もっとも「時間」の根源はどこにあるのか。本章ではより物理学的なところから紐解いている。物理学・数学的に時間はどのように読み解くのか、という公式を提示しており、なおかつ粒子・速度の観点からも「時間」とはどのようなものかを紐解いている。

本書を読んでいくと、根源的に「時間」とは何か、という謎が深まるばかりとなった。そもそも哲学的な考察が多かった「時間」について、おそらく物理学的に紐解いたのは、私の認識としては初めてかも知れない。とはいえ物理学的において「時間」を紐解くことは、速度などで使われることがあるが、「根源的な『時間』」といった哲学的な命題を物理で読み解くのは無理があるのではと考えた。その概念が崩れた一冊であった。