池上彰の行動経済学入門

これまで「行動経済学」はいくつか取り上げたことがある。もっとも経済学の中では身近なものであり、なおかつビジネスの場でも使われているからである。しかし使われているからと言って「行動経済学」とはどのような学問なのかわからない人も多くいる。

そこで本書である。本書はテレビでもおなじみのジャーナリストの池上彰氏が、行動経済学とは何か、また行動経済学の中で有名な理論について噛み砕いて取り上げている。

第1章「身近にあふれる! 行動経済学を利用したビジネス戦略」

よくビジネス戦略の中には「行動経済学」を参考に構築している所も少なくない。巷にある「期間限定」「数量限定」のものから、ここ最近流行している「クラウドファンディング」や商品などが、行動経済学においてどのように使われているのかを取り上げている。

第2章「意思決定をする直感~「ヒューリスティック」とは? ~」

「行動」に至るまでのプロセスにて「意思決定」がある。その意思決定を行うまでの要素としてどのようなものがあるのか。行動経済学の中には意思決定を促すための要素もあり、「ハロー効果」がその代表格として挙げられる。

第3章「「損したくない」が行動を決める! ? ~「プロスペクト理論」とは? ~」

「プロスペクト理論」は、

アメリカの認知心理学者カーネマン(D.Kahneman1934~)トベルスキー(A. Tversky1937~1996)が提唱した意思決定理論。数学的論理性や経済合理性から考えると非合理とされる判断について分析した。比較的発生確率の低いリスク(飛行機事故など)が過大評価され,比較的発生確率の高いリスク(自動車事故など)が過小評価されることなど。「大辞林 第四版」より

とあるように、意思決定における「リスク」評価について定義づけている。行動経済学の中でも特に有名な理論の一つである。このプロスペクト理論は本章にて宝くじやギャンブルなどを引き合いに出して取り上げている。

第4章「人は将来よりも「今」を重視する! ~「現在バイアス」「社会的選好」とは? ~」

購入をはじめとした「行動」を行う際に、「バイアス」と呼ばれるものによって動かされることも少なくない。将来のための投資と思っても、「今」の状況を選ぶことで、購買などの行動に移してしまう。なぜそうさせてしまうのかを取り上げている。

第5章「人を操る魔法の理論~「ナッジ」とは? ~」

「ナッジ理論」における「ナッジ」は、

注意を引くために肘で軽く突くツギノジダイ「ナッジ理論とは?定義と3つの活用例、ビジネスへの応用方法を紹介」より

とある。広告やありふれたものには人の行動を促す、あるいは注意を引くための「仕掛け」がある。その仕掛けはどのようにつくられているのか、そのことについて取り上げている。

第6章「行動経済学が切り拓く未来」

行動経済学はわたしたちの行動や購買、さらにはビジネスに関わることに直結している。しかしこの行動経済学もまた新しい理論や学問が生み出されているという。その未来を紐解いている。

「行動経済学」は身近な行動やビジネスに直結することが多い。そのため経済学を苦手としている方々がいても、「行動経済学」となるとすんなりわかる人もいるかもしれない。しかし中には行動経済学の「こ」の字もわからない方もいる。もっとも「行動経済学」は学問的に紐解くよりも、ありふれたもの・ことを見ていくと、面白いように紐解くことができるようになる。本書は入門書としてありふれた事例がふんだんに盛り込まれており、どのように使えるのかがよくわかる一冊である。

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