戦略思想史入門 ――孫子からリデルハートまで

「戦略」と言うと、巷の本屋にて並んでいる者として経営や事業にまつわる戦略の本が多くある。そもそも「戦略」は実際に武器を持って戦争に関しての作戦や理論について取り上げられている。もっともビジネスも、他者や業界との「競争」という名の闘いであることが多く、それに関連付けて、本書にて紹介する孫子の兵法やマキャベリの理論を引用されることが多くある。

では「戦略」そのものはどのように変わっていったのか、本書では戦略思想について著名な人物をもとに、どのように戦略が構築され、実行されてきたのか、歴史とともに紐解いている。

第一章「孫子」

「戦略」と言う所で最も有名な者として「孫子の兵法」がある。孫子が生まれたのは中国大陸における「春秋戦国時代」の真っ只中にいた。元々孫子は「孫武」が上梓した兵法書のことを指しており、もっとも孫武自身も尊称として「孫子」と言われたほどである。その兵法の根本の一つとして「闘わずして勝つ」があり、その思想の背景を取り上げている。

第二章「マキャベリ」

ニッコロ・マキャヴェッリ(以下:マキャベリ)は中世のイタリア、フィレンツェ共和国の外交官として活躍し、政治思想家としても名を馳せた。特に「君主論」で有名なのだが、他にも「戦術論」がある。本章では特に「君主論」や「戦術論」などにおけるマキャベリの戦略思想を取り上げており、特に「国家」としての軍事のあり方が中心となる。

第三章「ジョミニ」

自ら軍人としてナポレオン戦争に参加し、その経験をもとにして「戦争概論」を1838年に発表した、アントワーヌ=アンリ・ジョミニを本章にて取り上げている。ジョミニの戦略思想はナポレオン戦争など実際の戦争体験をもとにしつつ、自らも軍事学の研究を行ったものを合わさってつくられた。

第四章「クラウゼヴィッツ」

同じナポレオン戦争にてプロイセン軍の将校として参加し、自ら「戦争論」を発表し、近代の戦争に大きく影響を与えたカール・フォン・クラウゼヴィッツを取り上げている。クラウゼヴィッツの「戦争論」は彼の死後に発表されたのだが、それ以前にもいくつかの研究を発表しており、とりわけ「絶対的戦争」にまつわる研究が有名である。

第五章「マハン」

アルフレッド・セイヤー・マハンはアメリカ海軍の軍人であったが、軍人としての戦果よりも、研究者として有名であった。特に海軍や軍事にまつわる研究が認められ、アメリカの海軍大学校の教官にもなった。海軍に所属していたこともあり、マハンの戦略論は「海軍」にまつわるものが多い。しかしその理論は日露戦争にも影響を与えた。

第六章「リデルハート」

ベイジル・リデル=ハートはイギリスの軍人であり、戦略研究家としても有名である。特に20世紀における戦争における軍事戦略などの根幹に大きな影響を及ぼした人物でもある。特に第二次世界大戦における先述についても批判的に取り上げていたこと、さらには自ら若手の軍人や政治家を自宅に招き、サロンとして理論や戦略を教えていた。その教えを受けた人々が後に欧州において影響を及ぼした。

戦略は歴史と共に変化している。もちろん戦争のあり方はもちろんのこと、戦争における技術の進化も併せて「戦略」もカスタマイズされる。もちろん戦略の中には新しいものもあるのだが、その歴史が本書にて詰まっている。