ノブレス・オブリージュ イギリスの上流階級

現在こそ民主主義で、かつ平等の社会になっているイギリスであるが、暗に「階級意識」といったものが残っている。もっともイギリスを始め多くの国々では「階級」が存在しており、上流・中流・下流などランク分けされていた。特に上流階級の中には「貴族」などもいる。本書ではその貴族を含めた上流階級はどのような存在で、かつどのような教育などを行われてきたのか、その歴史などを紐解いている。

第1章「貴族の称号」

貴族における「称号」はいくつもあり、大まかな所で言うと「公爵」「侯爵」「伯爵」「子爵」「男爵」などが挙げられる。その人自身はもちろんのこと、配偶者や子どもなども独自の称号があり、多岐にわたる。

もともと先に取り上げた5つは「爵位」と呼ばれ、君主制を敷いていた国においてよく使われた。日本でもこの爵位が明治時代が始まってから公家や武家の整備により、新しく「華族制度」ができ、戦後間もない昭和22年に廃止された。この制度の中には先の「爵位」も含まれている。

第2章「「ヤンガー・サン」とアッパー・ミドル・クラス」

「ヤンガー・サン」は簡単に言うと「次男以下の息子」と表す。今でこそ「次男以下」というのはあまり意味を持たないのだが、当時の階級社会においては家督を継ぐか継がないかが「長男」にあたるところが多くあり、次男は家督を継ぐにあたり著しく不利な立場であるとされた。それを象徴付けるところとして、

このような息子たちは一番上の兄と同じ教育を受けるのだが、成人に達したとたんに、勝手に自活するようにと家を追い出されるp.37より

とある。「家を追い出される」というのが最も重要であり、貴族における家から追い出され、自ら家をつくるしかない。しかもその家は上流では無く、一つ下の「アッパー・ミドル・クラス」となることを意味している。

第3章「カントリー・ハウスと相続」

中性ヨーロッパの上流階級では郊外などの農村に荘園を置き、そこに大きな邸宅を構える「マナー・ハウス」が建てられ、使われていた。やがて16世紀になると、建築様式などを変えて「カントリー・ハウス」が次々と建てられた。2つの大戦でも残っているカントリー・ハウスもあり、一般公開されているところもある。

貴族をはじめとした上流階級における邸宅(カントリー・ハウス)もまた財産の一つとして挙げられている。その「財産」と言うと「家督」を含めた相続の話もあるが、上流階級としての「相続」はどのようなものだったのかも本章にて言及している。

第4章「アメリカン・マネー」

所変わってアメリカにおいて、社交界はどのようなものか、アメリカが独立して、イギリスを始め多くの国の人が移民をして、マネーや階級がどうであったかを本章にて言及している。

第5章「ステイトリー・ホーム観光」

イングランドにおけるカントリー・ハウスやマナー・ハウスのみならず、上流階級たちが滞在する家・城である「ステイトリー・ホーム」もまた、現在では観光名所の一つとして挙げられている。そもそも「ステイトリー・ホーム」はどのようにしてでき、かつ現在における観光名所となり得たのかを取り上げている。

第6章「アッパー・クラスの教育」

「アッパー・クラス」、つまりは上流階級における教育はどうであったのかを取り上げている。特に次章にて取り上げるオックスフォード大学とも関わりがあるという。もっとも「上流」の階級にいるため教養はもちろんのこと、振る舞いに至るまで「高貴」でなくてはならないといった掟があった。よくあるアニメやマンガにある上流階級の学校のイメージにほど近い。

第7章「アッパー・クラスとオックスフォード大学」

オックスフォード大学とアッパー・クラスの関わりは深く、政治家や学者が数多く学んだだけで無く、イギリスにおける歴代国王のうち6人がこのオックスフォード大学出身であると同時に、現在の天皇・皇后両陛下や秋篠宮文仁親王殿下もオックスフォード大学に留学をしたことがある。

現在とは異なる階級社会におけるオックスフォード大学の存在と教育体系はどのようなものだったのかを本章にてエピソードとともに取り上げている。

第8章「新しいアッパー・クラスと「ブライト・ヤング・ピープル」」

「階級社会」とひとえに言っても、単純なものではなかった。アッパー・クラスでも一代で築き上げた「新興」のアッパー・クラスもおり、それがどのようなイメージを持たれたのか、また代々から受け継がれているアッパー・クラスとはどのような関わりだったのかを列挙している。

第9章「現代のアッパー・クラスのイメージ」

階級制度こそは実質的になくなっているのだが、イメージや風潮としての「階級社会」や「階級意識」はイギリスにおいてはまだ残っている。どのようなイメージ・風潮をもっているのか、取り上げられたメディアの情報をもとに紹介している。

日本でも「上級国民」といったものがあり、階級意識はどうしてもある。第1章でも取り上げた「華族」や「爵位」のみならず、公家・武家といった括りでも階級の名残がその証である。本書はかつてあった、そして現在あるイギリスにおける上流階級の姿を映し出している。

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