ふしぎな社会 おかしな行政

社会や行政は時代とともに変化をしていくが、その「変化」が「不思議」なものであったり、「おかしな」ものであると考える人が多い。しかもそれが行政や社会の中枢にいる人にしかわからないものがある一方で、その中枢の外でしかわからないものもある。

それはさておき、本書は省庁の行政改革などに携わった中で出てきた「課題」や「不思議さ」「おかしさ」といった所の考察を行っている。

第Ⅰ部「社会と行政をゆがめる無知と誤解」
「節電」や「学力低下」「リサイクル」「少子化」の誤解や誤謬を突くとともに、官民双方の「無知」の危険性も突いている。

第Ⅱ部「ムラの利益に奉仕する怪しげな俗論」
国の財政政策や年金問題、さらにはいりょうや公共事業、そしてそれについての「ムダ排除」といった話について「俗論」と称して論じている。

第Ⅲ部「人心を惑わす安全・安心ヒステリー」
「安全・安心ヒステリーは現代の魔女狩り」
これほど含蓄のいく言葉は見たことがない。そもそも日本人は「安心」や「安全」という言葉に弱く、かつ「リスク」という言葉を忌避する傾向にある。最近では放射能のリスクにより、国産の米よりもむしろ中国など外国産の米を購入する家庭が増えたという。
それだけではない。日本人は次第に潔癖傾向にある。とりわけ最近に対する抵抗は根強くそれによる免疫力の低下も懸念している。

ふと思い出す言葉として、ソ連最後の大統領だった「日本はもっとも成功した社会主義国家」がある。賞賛しているように見えて、「皮肉られている」と言っても過言ではない。官から提示されたデータやメディアによる盲信によりあらぬ方向に進んでいるように見えた著者は本書にて警鐘を鳴らしたと言える一冊である。

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