部下を育てる リーダーのレトリック

日経BPマーケティング社 様より献本御礼。
この頃「部下を育てる」と言った本がよく出ている。「課長受難の時代」と言われて久しいが、課長でなくても部下を育てるのに苦心をしている先輩社員は少なくない表れなのかもしれない。

本書の話に移る。本書の著者は現在日本ラグビー協会コーチングディレクター、及びラグビーU20日本代表監督を務めており、選手達に「レトリック」でもって教えているのだという。「レトリック」とはいったい何なのか。調べてみると、

「1.修辞学。美辞学。
 2.修辞。
 3.実質を伴わない表現上だけの言葉。表現の巧みな言葉。」「大辞林 第三版」より)

とある。本書では「3.」の事を指している。レトリックというと小説や随筆、戯曲など文章だけで表現する所ではよく使われるが、ビジネスや研究など表現とは縁遠い場所では軽視している節がある。というのは「煙に巻く」ことや「舌先三寸で言いくるめられる」というようにネガティブな表現で言われることが多いのである。
部下を育てるのもそうだが、成長のきっかけとなるのはロジックもそうであるが、思いも寄らぬ「言葉」一つだけできっかけを作ることもできる。それを見つけるのが「レトリック」である。
本書は部下を育てるための言葉のかけ方についてレトリックを中心に紹介している。

第1章「気づきを与える言葉」
本書で記されているノウハウの多くは早稲田大学ラグビー蹴球部監督の他に、最初に述べたU20日本代表監督、及びサラリーマンとして活動した経験が詰まっている。
「気づき」を与えることは当然「部下」にある強みや発見に対してのきっかけを与えることにある。リーダーになる人にしても、これから組織の中に働くにしても成長のきっかけはいくつもある。そのきっかけをつくりつつ、個性を活かし、短所をカバーできるのかがリーダーにかかっている。とはいえリーダーは何でもできる人ではなく、むしろ相手の力なくしては仕事を為し得ることができない。相手の支えが必要であると同時に、部下にとって成長をする機会を求めているからである。

第2章「部下の成長を促す言葉」
チームとして、リーダーとして部下の成長は欠かせないものである。そのため部下自身もそうであるが、リーダーにしても部下の成長の助力になる。そこに「言葉」が出てくる。ただ単純に「がんばれ」や「もうちょっとだ」というようなかけ声だけでは成長は期待できない。言葉一つだけでもリーダーが予想できないような成長ができることもあれば、部下によっては立ち直れないくらい精神的に滅入ることさえある。
本章ではリーダーのために部下を高めさせるための言葉として目標設定や準備・実践・視点・評価について提示している。

第3章「チーム力を高める言葉」
どのような仕事にもチームワークは必要不可欠である。チームワークを円滑にしようとするために、言葉をつくったり、部下を発奮させたりするような言葉や行動を起こす。ミーティングや視点、仲間など様々な言葉を取り上げている。

言葉は偉大である。その言葉の使い方一つで人も、チームも大きくすることができる。その一つの役割として「レトリック」がある。論理に重視されがちであるが、人は論理的に生きることは難しい。むしろレトリックを使って伝える、そして伝える事で人を成長することができる媒介の一冊である。

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