あなたイズム

「あなたイズム」と言う言葉にインパクトを感じてしまうが、直訳すると「自分らしさ」とか「あなたらしさ」というような使われ方で「あなたイズム」と使われているのだろう。それはさておき会社の中では「自分らしくできない」もしくは「自分の考えに沿った仕事をする事ができない」、または「自分と組織とで考え方に齟齬があって十分にパフォーマンスが発揮されない」と言うような声を聞く。そのような方々はたいがい、仕事は「つまらない」と言うことを口にする。ではどうやって「イズム」や「らしさ」を見つけ、組織と融合しながら互いに作用させていくのか、そのことについて取り上げたのが本書である。

第1章「なぜ仕事は「つまらない」のか」
実際に私自身は仕事に対して「つまらない」と思ったことがなく、単純作業でも「面白さ」を見つける事が多い。しかし仕事をしている方々の中には「つまらない仕事」と思っている方もいる。その「つまらない」基準は仕事をしている人それぞれになってしまうのだが、どうして「つまらない」と思ってしまうのか、それは自分自身のスキル・才能に見合った仕事では無いこと、さらには志向や考え方が一致していない仕事をしており、「本当に自分のためになっているのだろうか?」と疑問に思ってしまうことにある。

第2章「自分の「持ち味」、組織の「らしさ」」
では自分自身の持っている「持ち味」と組織にある「らしさ」をどのようにして持ち合わせていくべきか、まずは自分自身の持っている能力を探し、相手もしくは組織の持っている力を見つけ、そして両者の「接点」を見つける事で、共創できる所を見つけ出すことができる。

第3章「イズムを見つけよう」
自分自身の「らしさ」「イズム」を見つけるにはどうしたら良いのか、本章では著者である博報堂ブランドデザインが行っている質問法、想定の仕方、組織の把握などを解き明かしながら自分らしさを見つけて行く方法をケーススタディ形式で解説している。

第4章「イズムをさらに活かすために」
自分自身、そして組織自身の「イズム」「らしさ」を見つける事ができたら、今度はその「イズム」を活かすことにある。そのイズムを活かすにはどうしたら良いのか、考え方としては会社や組織の行動指針がどうなのか、それをもとに自分自身の「イズム」と重ね合わせて接点はどこにあるのかを追求していく必要がある。

第5章「「仕事のなかの自分」を変えるヒント―野田稔氏との対話」
組織・人材改革のコンサルタントを行う傍ら、明治大学大学院の教授を勤める野田稔氏との対談の中で、「仕事の中の自分」をテーマに「働く」事に対して「自分」をどのように見つけて行くのか、そして変えていくのかを取り上げている。ヒントとしては第1章のつまらない要素に「同質性」がある事、そしてそれを軽減するためにはある「要素」が必要になるのだという。

第6章「「自分のスタイル」とは何か―中竹竜二氏との対話」
中竹竜二氏と言えば、名門早稲田大学ラグビー部で活躍し、大学院、就職を経て母校である早稲田大学ラグビー部の監督を勤め上げた異色の人である。著書もまたラグビーはもちろんのこと、ラグビーの経験をヒントにしたリーダーシップの本を多数上梓している。中竹氏が語らう「自分のスタイル」とはいったい何なのか、その多くに「ビジョン」という言葉が使われている。

第7章「いま企業が求める「共感できる個人」とは―星野佳路氏との対話」
星野リゾートの社長として全国津々浦々のリゾートを再生してきた実績を持つ星野氏。星野氏自身も自らの再生の実績から著書を多く出版してきた。本章では個人の仕事やリーダーシップと言ったモノではなく、あくまで「会社経営」の観点から「イズム」を見つけ、育てていく考え方について取り上げている。

元々日本人は個性的と言うよりも、組織の中の一部分として働くことがほとんどだった。これが日本的経営として成り立ち、自分とは何かと言うことを考える事はごくまれだった。しかしその日本的経営が崩れ、終身雇用制度が崩壊した今、本当の意味で仕事とは何か、自分らしさとは何かと言うことを、仕事をしながら考え出している。本書は組織における「自分らしさ」をどうしたら導き出せるのか、個人のみならず組織の観点でも実用のできる一冊と言えよう。

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