昭和声優列伝

今でこそアイドル並みの活躍を得ている声優の職業であるのだが、かつては俳優業のおこぼれで吹き替えやナレーションと言った仕事を生業としてきた。しかしその声優の仕事の幅も広がるようになり、俳優とは別の「声優」の職業が生まれるようになった。その草分け的存在である著者はその歴史を見てきた一方で「勝田声優学院」と呼ばれる学校をつくり、声優の卵たちを厳しく育て上げながら一流の声優を数多く育ててきた。「BL界の帝王」として名を馳せる森川智之氏やドラえもんのスネ夫の声優として有名な関智一氏も薫陶を受けた人々の中にいる。
その著者が見てきた声優界の歴史と関わってきた声優たちも併せて綴っている。

第一部「そして声優が始まった」
著者は小さい頃「のらくろ」の漫画に触れつつ、様々な漫画・小説に触れていくこととなった。その触れていく中で大東亜戦争が起こり、終戦後は俳優の道を歩み始めた。その後俳優の仕事の中で吹き替えなどの仕事が徐々に舞い込んでいくようになり、やがて声優になっていった。もっとも他にもアナウンサーの試験も受験し、なおかつラジオDJとしても活躍した時期があったという。

第二部「声優列伝」
著者自身と同世代・先輩・近しい後輩声優たちとその関わりあいについて取り上げている。声優の中には俳優業も兼業された方もおり、劇団を主宰したり、著者のように講師や声優学校を作ったりする人もいる。そのような方々との関わりを見てみると、「苦労」という言葉では片づけられないほどの壮絶な体験もあったという。そのことを考えると今の声優は多かれ少なかれ苦労はあれど、本書で取り上げられている声優の方々の体験はしていないように思えてならない。

そんな著者も今年の4月2日で卒寿(そつじゅ・90歳のこと)を迎える。今でこそ「声優ブーム」と呼ばれる最中、様々な声優が誕生し、活躍しつつある中で著者は今、何を思っているのだろうか、そのことについても知りたくなる。

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