軍隊のない国家

日本の憲法9条には「戦争放棄」「交戦権の放棄」について明記されている。いくつかの論客や国民からは自衛隊は憲法9条に反するとして訴えているという(多くは敗訴しているが、中には違憲としている判例もある)。

本書はそういった憲法9条を見直しつつ、軍隊のない国家27カ国について迫っている。永世中立国をはじめ日本のように戦争放棄を憲法に盛り込んだ国もある。

それを挙げて自衛隊の意義や憲法9条の担保を結論付けているが、著者はとんだ思い違いをしているといっても仕方がない。27カ国は確かに軍隊はない。しかしものは言いようで軍隊とは別に義勇隊であったり、保安隊といった軍隊のような人たちを保有している国、さらには他国の軍、もしくは多国籍軍が駐留している国もあるため必ずしも軍隊がないとは言えない国々である。永世中立国でも自己防衛のために軍のようなものを持っている。

そういった国々を軍隊と呼べるのだろうかと著者に聞きたい。自衛隊も交戦や先制攻撃などはできない。それに自衛隊が解散してしまったらひたすら軍拡を続けている北朝鮮や中国に攻撃されて一巻の終わりというのが容易に想像がつく。

憲法9条は集団的自衛権ができなくとも軍隊とは別の義勇隊があったら違反なのだろうか。軍隊でも武器を保有せず、戦場の整理(災害派遣も含む)だけに駆り出される軍隊であればいいのか。その解釈の意義こそ統一、それよりも憲法改正を含んだ論議をすることで9条の意義や日本国憲法の在り方を見直すいい機会ではなかろうか。