日銀はだれのものか

財団法人アメリカ研究振興会理事長(本書発売当時)で、石油問題の権威として知られ、日銀審議委員も勤めた中原氏の日銀人選にかかわる自叙伝である。

第一章「金融政策に向き合う」
本書の話の始まりは「失われた10年」の真っ只中であった。山一證券が倒産し、北海道拓殖銀行が破たんした後から本書の話は始まる。

第二章「ゼロ金利への挑戦」
第三章「ゼロの攻防」
第四章「ゼロ金利解除」
ここのあたりで景気回復のための策として「ゼロ金利」というのが紛糾した。さらに言うと「金融ビックバン」によりメガバンクが続々誕生した。本職はシステムエンジニアであり、生まれもちょっと早いのであまり金融の知識は乏しいものであまりうまく説明できない。「ゼロ金利」は99年あたりから始まったが、アメリカのブッシュ政権が誕生した時に日本につきつけたことの一つとして「ゼロ金利」の解消があったことを思い出す。

第五章「量的緩和策導入への道」
第六章「量的緩和以降」
ここで出てくる「量的緩和(策)」が出てくる。さてこれは一体何なのかというと正式には「量的金融緩和政策」と言われ、2001年3月半ばから約5年にわたって行われた政策で日本銀行が国債や手形を買うことによって資金を供給し、資金を出回ることにより経済を活性化させるという政策である。これが功を奏したのは2・3年後のことであり、それまでは経済は見る見るうちに減速していった。「失われた10年」を脱出したときでもある。

第七章「原油高を読む」
「失われた十年」を脱し、「戦後最長の好景気(当ブログでは「実感なき好景気」としている)」となったが経済が好景気になったことによる弊害も生じた。「実感無き好景気」を物語るが如く「格差」という言葉が乱舞しはじめたときである。さらに章題からわかるように急速な原油高騰が深刻になり始めたとでもある。ちなみにこの原油高は好景気が終わっても続き、今年の初秋にようやく値下がった。

第八章「日本経済と日銀の将来」
日本経済のみならず世界経済は急速に減衰している。日本でも今国会において第二次補正予算が通るか通らないかという所でもめている。さらに今年は解散総選挙が控えている。そう考えると今年の日本は政治的にも経済的にも「変革」の時であろう。そう、アメリカの「change」と同じように。本書は3年前に発売されたためちょっと内容とずれるところが多いが、本書で書かれている時では私の知っている限りでは「村上ファンド」の問題で福井総裁(当時)の資質が問題となった時である。日銀総裁と言えば昨年の2〜3月の時には新総裁の選出に与野党が対立し前代未聞の総裁の椅子が空席となる事態に発展した。これにより世界的にも嘲笑の的にされ、世界的に有名な雑誌「エコノミスト」には「JAPAiN」と書かれる始末であったことは記憶に新しい。

経済が混迷にある今だからでこそ麻生首相をはじめとした政府、白川総裁をはじめとした日銀の舵取りにかかっていると言っても過言ではないが、どうも頼りないというのが現状と言うほかない。批判の的になろうとも自分の決断でもった大胆な策をつくり、決断することが日本を背負うリーダーの務めではないだろうか。