読んだ、飲んだ、論じた

本書は3人が1夜三冊ずつ、計23夜にわたって三冊の本について鼎談を行ったものである。3人は書評でも有名である。鹿島茂氏は「子供より古書が大事と思いたい」とはじめ多くの書評の著書も書かれており、福田氏は文芸評論家で「作家の値打ち」や最近では「闘う書評」も上梓されており、松原氏も経済から格闘技まで幅広く論じられる人である。
本書は全部で69冊の本の書評を行っているが、鼎談のなかで枝葉のように次々と参照する文献を数えると100冊をゆうに越えるものとなる。1冊で100冊,200冊味わえるものに仕上がっているところを見ると、書評家を代表する方々の賜物だろう。

この鼎談について表紙のハードカバーをめくるとその語源が出てくる。もともとこの鼎談は英語で「シンポジウム」と訳される。この「シンポジウム」はギリシャ語のsyn(一緒に)とponein(飲む)の合わさった、ことばを派生してできた単語である。シンポジウムは討論であったり鼎談を行うだけと言うのが今の状態であるが、本来の意味を紐解いてみるとまさに飲みながら論じていくと言う形となる。鹿島氏はこの言葉の通りに、本書のタイトルにしたという。

3人の論者を互いによって1夜1夜ごとに本について論じると言うのは、ひとりで書評を行うよりもはるかに実りがある。最近では朝や夜に読書会と言うのがいたるところで開催されており、読書を媒介にしてさらに人の輪が出来上がる。読書は必ずしもひとりで読んでひとりで論じて終わるようなものではないと言うのは昨年からセミナーに参加して思ったことである。

さらにちょっと面白いことを考えてみた。書評ブロガー、もしくは読書家を集めてバーで酒を飲みながら未読本を持ってその本について数時間にわたって論じつづけると言う企画も頭に浮かんだ。

酒を飲みながら読書をし、その本について何時間も論じる。なかなかいいものではないだろうか。

<鹿島氏の著書>

<福田氏の著書>

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