アイデアパーソン入門

「考具」で有名な加藤昌治氏の一冊。本書はどうやら「考具」の副読本として読まれたほうがいいというが、私自身「考具」を読んだことがないので、いきなり副読本からのアプローチになる。

それはさておき、本書の最初を読むといきなりこのような文言が、

「最初に宣言してしまいましょう。
 あなたはすでに「アイデアパーソン」なのです。」(p.3より)

本書はこれを前提にして始まる。とはいえアイデアパーソンと言っても当然「初級者」「中級者」「上級者」と分かれているためたとえ「アイデア」を出すことが苦手な人でも本書を読めばどんどんアイデアが浮かんでくる。中級者でも上級者でもアイデアについて学ぶことができるように作られているところがなかなかすごい。アイデアに関しての「一生モノ」をつくっているのだから。

さて本書は全部で「50考」ある。1考1考全部紹介するのは難しいためここではいくつか掻い摘んで紹介する。

第0考「このキーワード、まずは覚えていただけますか?」
本書では「アイデア」「アイデアパーソン」「たぐる」という言葉をよく使う。これ自体全部解説してしまうと本書を買う意味がなくなってしまうのでここでは割愛する(後半出てくるかもしれないが)。それにしても「たぐる」は「手繰る」と言う感じがあるのだが、独自に定義されている。「たぐる」と言うのは本書において重要なワードの一つであるがそれについてはまた後ほど。

第7考「アイデアと企画とは別物である」
企画と言うと自分の提案を様々な根拠を込めて作ったものである。そこにアイデアは入っているのかと言うと、はいている企画も有れば既存に対抗しただけの企画もあろう。本著ではこれ自体完全に別物扱いをしている。というのは企画は諸条件があり、しっかりとした裏がとれたら上司からGOサインを受け取ることができる。それに対してアイデアはユニークさ、本書では「わがまま」もしくは「我が・まま」と言うものになる。思いつきで、時としてくだらない。だが個性は強いという要素がある。そういったアイデアを重視する者が会社のアイデア会議でもよく使われる手法がある。
そう、「ブレーン・ストーミング」である。

第12考「既存の要素を分解すると」
既存の要素とは一体何なのか、自分がかつて経験した体験(直接体験)、相手から聞いたものや本やTVなどからの疑似体験(間接体験)、自分の持っている知識と言ったものである。その中でどのようにアイデアと直結していけるのかというのがカギとなる。これをタグとして自分の思いついたものを結び付けていくか、もしくは新しいものをつくるのか。

第20考「体験と知識を自分ごと化する技を「たぐる」と名付ける」
そう考えてばかりだと三日三晩考えそうなのでここで答えを見てみようと思う。それは、第0項で出てきた言葉、
「たぐる」
である。辞書で調べると

たぐ・る【手繰る】
(1)糸・綱などを、両手を交互に使って、手元へ引き寄せる。たくる。
(2)話の筋や記憶を順々に求めたり、引き出したりする。
上記リンクより)

魚釣りで「たぐりよせる」という言葉を聞いたことがあるだろう。アイデアは既存の要素を時には地引網、ときにはつりざお一本でたぐり寄せるというものなのか。
しかし本書ではこの「たぐる」は4つの行動習慣を総合したものである。

「ほる」
「思いだす」
「押さえる」
「ぶつかる」(p.94より、さらにp.96であればマトリックスになっているのでわかりやすい)

という。知っていたことを「ほりおこし」、偶然に思いだす、知らなかったところは「押さえておき」そこから新しい物・事に「ぶつかる」。アイデアを出す最高形態がこの「ぶつかる」であろう。ではこの「ぶつかる」ことを多くするにはどうすればいいか。
第35考「浮かんだアイデアは必ずメモる!」
書評をするにあたって私も毎日メモを持ち歩くようになった。読んだことをどう表現するのかの材料になるためである。ほかにも思いついたものを書きとめることもしている。後者のことを言っているだろう。いろいろなものからたぐってみて新しいアイデアをつくっていく。それは机の上ばかりではない。

「新たな発想をしたければメモをもって街に出よう!」

そんな感じであろう。

第44考「アイデアパーソンは越境者!?」
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外何者でもない(p.178より)」
まさにその通りである。何もないところからアイデアと言うのが出るわけがない。さてこの「新しい組み合わせ」と言うのが曲者で常識の壁、もしくは公私と言ったあらゆる壁を突き破る。言い方が悪いかもしれないが「アイデア」の性格は「天衣無縫」というべきかもしれない。

アイデアは誰でも出せるものである。それが苦手な人というのはただそれを知らないだけ。アイデアをどんどん出して新しいものを創り上げていく。だから本書を読んだ感想はこれしかない。

「さあ、メモをもって街に出よう!」