都市圏の一極集中化が止まらない中で地方は疲弊を喫している。先の「戦後最長の好景気」と呼ばれた時代も地方にとって恩恵を受けることはほとんど無かった。
しかし、地方によっては町おこし・村おこしなどを行い、活気を取り戻した所も少なくない。
本書は地域でしかできない力を使って町おこし・村おこしに成功した事例をもとに、本書のタイトルにある「地域」に備わっている力とは何かについて解き明かす。
第1章「開かれた地域自給のネットワーク」
農業の街と言った所は様々な地場産業を用いて「地産地消」を行う所がある。地産地消については第4章などでももう一度語るのだが、ここでは島根県雲南市木次町をはじめとしたところで酪農を中心とした地域自給ネットワークを紹介している。
第2章「商店街は誰のものか」
「商店街」というと、活況を呈しているところであれば何の問題も無いのだが、「シャッター街」と呼ばれる程、寂れてしまったところも少なくない。
しかし、商店街は大型スーパーやショッピングモールにはない店と客との距離の近さ、さらには一種のコミュニティが形成されていることの強みが存在する。
そこに新たな要素として、「食」や「福祉」といったスパイスを加えることによって商店街は瞬く間に活気を復活させることができる。商店街はまだ、生き残る術を残している。それは「変化」を恐れないことである。
第3章「これがほんまの福祉です」
地方都市が抱えているものとして「過疎化」と「高齢化」が挙げられる。「高齢化」に伴い、福祉の充実が求められるのだが、働き手がいないような状態の中でどのようにして求めていけばよいのか、という事を連想してしまう。
しかし徳島県上勝町では、「葉っぱビジネス」で寂れそうになったところから這い上がり、今ではUターン、Iターンを積極的に受け入れているのだという。その町に住んでいる高齢者も「好」齢者として、仕事に家庭にと充実した毎日を送っているという。
第4章「地産地消と学校給食」
最近では「食育」という言葉をよく聞く、これは、
「心身の健康の基本となる,食生活に関するさまざまな教育。」(「大辞林 第三版」より)
と表されている。これは2007年に「食育推進基本計画」というのが地方主導で進められたのだが、この計画は「食」に対する指導のみにとどまっており、食の根幹となる「農」が蔑ろにされている。
しかし、愛媛県今治市で行われている食育は、地産地消を根ざしながら行われている。というのは食べることだけでは無く、「食べ物を育てること」にも力を入れており、自分で育てたものを食べるため、残食がきわめて少なく、食に対するありがたみを学ぶことができるという。
第5章「北の大地に吹く新しい農の風」
昨年度の食糧自給率はカロリーベースで39%(平成24年度)と低水準をさまよっている日本である一方で、北海道はカロリーベースで191%(平成23年度・概算値)と日本でも最も高い水準にある。
それは置いといて、北海道の農業は活況を呈しているのかと思ったら、90年代初頭までは「やっかいどう米」に代表されるように、消費者を考えないような農業を行い続けていた。それを当時の北海道知事や農協などを巻き込み、消費者を意識した農業に転換していった。
第6章「四万十源流発、進化する林業の現場から」
高知県の四万十というと、今年の8月12日に岐阜県多治見・埼玉県熊谷が記録していた最高気温40.9℃を塗り替え41.0℃を記録したところでも知られる。それだけではなく、のり佃煮の精算も多い清流であることでも知られている。
本章では四万十で行われている林業についてを取り上げているが、「里山資本主義」という本でも取り上げたのだが、これから需要価値が高くなるビジネスとしてもてはやされる事になる。その先駆けとして行われているのだという。
第7章「公共交通はやさしい」
公共交通というと電車や飛行機・バスもあるのだが、市町村で運営している路面電車・バスもあることを忘れてはならない。ここでは富山県富山市の路面電車が乗客の増加と「公共交通のシンボル」を目指すべく努力した姿を映している。
第8章「市民皆農のすすめ」
日本は元々「瑞穂の国」と呼ばれ、農業が盛んな国であった。しかし時代が変化するにつれ、都市化が進み、生産も農業から興業へとシフトし、「瑞穂の国」の影が薄れてしまった。農業を中心としているところも北海道や新潟をはじめとした、ごく限られた所でしか行われなくなってしまった。それを打破すべく東京都練馬区・神奈川県横浜市と言った所では「市民農園」がつくられ、農業すると言ったことを推し進め、実際に行っている方もいるのだという。
地域は衰退している、とは言っても「市民のアイデア」と「変化を恐れない勇気」があれば地域は必ず変化を起こし、活性化することは間違いない。それぞれの地域にしかない特性や特産があり、それらを広める、または新しい特産をつくると言ったこともできる。衰退のピンチはチャンスに変えられる。そう信じよう。
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