心理学入門一歩手前―「心の科学」のパラドックス

大学では学問の一つとして定着している「心理学」。最近ではビジネスにおいてコミュニケーション力、特に「NLP」というものが出てきている。「NLP」というのは直訳すると「神経言語プログラミング(Neuro Linguistic Programming)」と言い、コミュニケーション技法や自己啓発技法として最近注目を集めている言語であるが、その反面商業的・科学的観点からの批判も多い。

NLPの話についてはここまでにしておいて、NLPは心理学の側面もあることは周知のとおりであろう。ではこの「心理学」というのは一体どのような学問なのか。本書は「入門の入門」に当たる一冊なので、これから心理学を学びたい人にとってはうってつけの一冊である。

序章「学問としての心理学」
最近は「心理学科」に志願する学生が多い。私の大学でも「心理学」の講義はあるのだが、あまりの人気で履修制限がかかるほどの講義である。私も「心理学」を履修したことがあり、その時には心理テストと言ったことについて思い出に残っている。
ちなみに本書は「学問」としての心理学なので、とっつきにくいところが多い。

第一章「心について考える」
「心」の学問というと、心理学以外では「哲学」が根本であり、本章ではプラトンの「イデア」やアリストテレスの「プシケー」について取り上げられている。

第二章「現代心理学の姿」
現代における心理学というと多岐にわたっており、医学・社会学・ビジネス・自然科学と大きく分かれると4つ、そこから枝葉のように分かれており、全部で15個もある。一例では、社会学的な要素の強い「認知心理学」、医学的な要素が強い「臨床心理学」「精神分析学」、ビジネスの要素の強い「産業・組織心理学」というものがある。また心理学を研究するにも、世論調査が行っている、アンケートに答える方式があり、その中でも面接によって実験を行うという方法を用いて分析を重ねていく。

第三章「科学について考える」
心理学は前章のような「実験」や「調査」を行っているので、文系の学問であるが、研究の範疇では理系の要素も出ている。心理学は前述のような「科学的」要素があり、その意味から本章は「科学」とともに心理学を考察している。

第四章「心理学の誕生」
ではこの「心理学」はいつ頃から起源となったのかというと、19世紀ころから始まったとされている。比較的最近できた学問だといえる。

第五章「「科学的心理学」への道」
学問としてはじまった当時、19世紀ごろは科学としての役割は担っていたものの、もう一つとして、言わば「スピリチュアル」の要素も心理学にはあった。

第六章「素朴実在論と中枢主義の克服――現代心理学の課題(1)」
第七章「ギブソンの存在論――現代心理学の課題(2)」
ここからいよいよ複雑になる。というのは本章ではハイデガーの哲学と神経心理学を用いて、認知心理学における課題を列挙しているからである。心理学であれば基礎的なものですむかもしれないが、ハイデガーの哲学も絡んでいることもあってか、専門用語が飛び交っているため、ある程度勉強していないと読めない。

第八章「仏教の心観と存在論」
最後は仏教と存在論についてである。これまでは西洋哲学や心理学を元にして考察を行ってきたことにより、現在の心理学を考察するうえで非常になじみやすいところであった。しかし仏教と西洋心理学・哲学は思考からして異質なものであるのでなじみにくいという印象があるのだが、心理学自体はそれを考察する学問である。

心理学を入門するにあたって、「心理学とは?」というのが分かりやすく書かれている1冊であった。