デフレと超円高

現在では小康状態になったとはいえ、昨年末には1ドル76円を上回るほどの「超円高」の現象が起こっている。その原因はヨーロッパの財政危機によりドルやユーロの価値が失われたところにある。

円の価値が高まりつつある日本であるが、経済は逆に下り坂の一途をたどっている。リーマンショックから立ち直りかけたつかの間、東日本大震災や先述のヨーロッパの財政危機などの二重苦と呼ばれる状況にある。

本書は超円高によるデフレとデフレの現象を考察するとともに、著者の分析をもとにデフレの脱却をどう図っているかを提言している。

第一章「円高はなぜ起きるのか」
世界的に景気が下り坂になると円高になるという。あたかも嘘のような話のように見えるが、むしろ「下り坂」になっているからでこそ、円高が起きるのだという。
その要因には日銀などが決める「金利」が大きく関わってくる。

第二章「デフレは円高を生む」
円高になる要因としてもう一つあるのが私たちの生活に大きくかかわる「消費者物価指数」だという。これも第一章で述べた論理と同じであるという。

第三章「デフレと円高はなぜ悪いのか」
デフレになれば、消費が冷え込み経済が回らなくなる。円高にしても自動車や半導体など輸出頼りにしている企業に深刻な打撃を食らってしまう。その一方で円高は原料輸入や海外旅行が安価になる利点もあるかもしれないが、これも国内旅行や国内生産が減少するというデメリットも生じるという。

第四章「構造デフレ説の誤謬」
ここでは中国や銀行、生産性に関するデフレについての批判が中心である。

第五章「デフレは貨幣的現象である」
では著者の定義する「デフレ」はどのような現象なのだろうか。著者は「貨幣」の要因が大きいという。多くの資本主義経済は「貨幣」に夜ものが多いため、その流通量によって経済は動くのだという。

第六章「日銀の金融政策の目的は「デフレの安定化」」
デフレと呼ばれる経済の中で日銀はどのような金融政策を行っているのか。著者は「デフレの安定化」と定義している。バブルやインフレを極端におそれ、安定的なデフレを望んでいるため、後手後手にまわっているのだという。

第七章「インフレ目標でデフレも円高も止められる」
あまり聞きなれないが「インフレ目標」がデフレ脱却のために必要な政策であるのだという。本章では金融政策の提言をしているのだが、その中には人を代えるべきという議論があったが、著者は日銀総裁になった場合、その政策を実行するのだろうかと勘ぐってしまう。

超円高と呼ばれる現状にある日本経済であるが、日本政府や日銀など有効な脱却政策が打てていない現状にある。そのような現状の中で本書のような提言本は数多くあり、本書もそのうちの一つといえる。しかしその提言本を呼んでいくと、大阪市長である橋下氏が「じゃああんたやってみなさいよ」と返されたらどのような返答をするのだろうか。