「スクリューフレーション」と言う言葉は初めて聞く。「スクリューフレーション」とは、
「中間層の貧困化(Screwing)とインフレーション(Inflation)が組み合わせた造語で、中間層の貧困かとインフレーションが同時に発生する状態」(本書見返し側のカバーより)
のことを指している。実際にインフレーションを起こしているとは疑わしいが、中間層の貧困が著しいのは最近のニュースを見てわかる。
かつては「一億層中流」と呼ばれた時代が崩壊し、その「中流」と呼ばれた中間層が貧困の憂き目にあっている原因、と復活への活路はあるのか迫っているのが本書である。
第一章「世界経済の低迷―その原因は」
経済は発展途上国の急激な成長により世界的にも経済は発展している。その一方で「リーマン・ショック」「ソブリンリスク」により欧州の先進国が軒並み財政危機に陥った。日本でも「超円高」から経済が「二番底」と呼ばれるような状態となってしまった。
さらに経済のグローバル化により、工場が海外移転するだけではなく、優秀な人材が日本から流出する事象も現に起こっている。
第二章「日本経済は復活するのか」
日本の株式市場は外国人投資家によって平均株価が変動する状況にある。その外国人投資家は世界の経済状況を鑑みて株を売買するため世界情勢が左右されやすいと言える。
さらに第一章で述べたような事象により、「ものつくり」で輸出に頼りがちだったがために、輸出をしても利益を上げることができなくなった。
第三章「「新興国」「途上国」のインフレ、人件費上昇、都市化」
発展途上国、とりわけ「BRICs」と呼ばれる国々の経済が急成長を遂げたことにより、食料やエネルギーの価格競争が盛んになっていくに連れ上昇していく。とりわけ原油高が高まり、ガソリンが高くなったのは有名な話である。
そういった意味では円高によりデフレーションが起こるどころか、「スタグフレーション」が起こっているとも言える。
第四章「忍び寄る「スクリューフレーション」」
原油などのインフレーションが起こっているにも関わらず、人件費削減など日本企業では「経営合理化」が止まらず、労働者に与えられる給与も緩やかな右肩下がりを見せている。さらには雇用のミスマッチも重なる、人件費の削減をするなかで「非正規雇用」が若者世代を中心に増加した。
第五章「日本から中流家庭が消える日」
世界的な経済成長のなかで食料やエネルギー価格が上昇しながらも、給与額の減少、さらには増税などの負担増など生活の財政も火の車となってしまっている。
しかもその事象は都市圏以上に深刻さを与えているのが地方である。
第六章「「スクリューフレーション」が生き抜く日本経済」
中間層の貧困化は日本人の生活の貧困化にもつながっているのかもしれない。しかし政府も政府で国家の借金をどうにかしようと、増税を図っている状態で、生活にはなかなか手を着けられていない。かといって日銀もほとんど無策といった状態にある。その「スクリューフレーション」の打開策として「食糧自給率」の増加を本章では挙げている。
確かに食料を輸入に頼っているだけに有効なのかもしれないが、放射能のリスクなどのリスクが挙げられる。
「スクリューフレーション」をなくすどころか、抑えることでさえも難しい局面に入ったことは事実である。しかし、経済をよくするためには政府だけがやっても、日銀だけがやってもうまくはいかない。むしろ国民一人一人が経済のために貢献できることはある。微力ではあるが、その人数が多ければ多いほど「スクリューフレーション」の影響は小さくすることができるという。何事も他人事にせず、自分事としてとらえることが大切である。
コメント