今となってはほとんど無くなったのだが、一昔前までは満員電車に揺られて通勤すること常だった。「窮屈」とも呼べる様な通勤時間を以下にして活かそうかと考えたのが、自分自身として「読書」があった。周りに迷惑をかけないように鞄の中からそっと本を取り出して読む、といったことをやり続けていたことはまるで昨日のことのように覚えている。
私事はさておき、路線によって異なるが電車通勤はまさに「戦場」と言える様な雰囲気を醸し出す。時として、殺伐とした雰囲気になる事さえある。
本書はその「戦場」と呼ばれる様な満員電車の乗り方について30年以上の経験から得たノウハウを伝授している。
第1章「通勤電車の正しい乗り方」
電車通勤を行うための一歩として車両選びがある。「満員電車」と一重に言っても、全車両が満員状態にある電車もあれば、特定の車両だけ満員になる電車も存在する。前者であればどこを選んでも同じになってしまうのだが、後者は「車両選び」をする事が重要な要素となる。車両選びが終わると次は立ち位置もある。これは季節によって異なり、そこについても取り上げられている。
第2章「着席時の作法」
通勤する人、あるいは帰宅する人の中には座席に座れる方もいる。もっとも座席に座れることは非常に運が良く、読書をしたり、あるいは仕事の準備をする、あるいは眠ることもできるなど「至れり尽くせり」な所がある。
しかし着席時でも「目線」や「隣」などの罠が存在する。それを避けるための目配りや着席、あるいは睡眠姿勢と言った所も紹介されている。まさに着席時の防衛術と言っても良い。
第3章「さらに美しく乗るために」
「車内マナー」という言葉として「携帯電話での通話は禁止」や「整列乗車」と言ったものが挙げられる。しかしそれは一部でしか無く、他にも服装や頭髪、靴、鞄、さらには「匂い」、吊革の使い方に至るまで網羅されている。
「美しく乗る」というよりもむしろ「乗車マニュアル」と言っても過言ではない。
第4章「鉄道施設の利用方法」
本書は電車通勤である。ここまでは「乗車」について取り上げたのだが、「電車通勤」は「乗車中」ばかりではない。改札やエスカレーター、トイレの順番待ちや売店の使用方法など事細かなマナーが存在する。「慣例」でやっている人でも無意識にから意識的に実践できる内容や気付きも存在することのできる所である。
第5章「危険から身を守る技術」
電車通勤には危険もはらんでいる。その一つとして「痴漢冤罪」もあるのだが、そこについては第6章で詳しく紹介することとして、他にも最近では電車通勤中に何物かに刃物で刺される事件も頻発している。本書ではあらゆる危険から身を守るための技術について紹介されているが、最近では世知辛い世の中であるため、あらゆる危険を知り、身を守ることも必要であるため、本章は非常に重要と言える。
第6章「痴漢の傾向と冤罪」
前章にもあった「危険」の一つとして「痴漢」が取り上げられている。本当に痴漢被害に遭い泣き寝入りしている人もいれば、逆に痴漢の疑いをかけられ、何もしていないのに「前科」を持ってしまい会社や社会から抹殺されてしまう人もいる。
その「痴漢」をどのように防げばよいのか、本章ではその傾向と心得について紹介されている。
このような時代だからでこそ本書、もしくは「電車通勤士」という言葉が出てくるのだと思う。都市部は未だに一極集中が続いており、路線や電車本数が増えたとはいえ「満員電車」は未だに消えておらず、これからもずっと続いていくことだろう。そう、寺田寅彦が「電車の混雑について」という随筆が発表された1922年頃から90年以上にわたって続いている。続いているからでこそ、本書が電車通勤の方々に必要であり、電車通勤の在り方を示す「電車通勤士」の存在も必要である、まさに「出るべくして出た」一冊である。
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