地震と火山の日本を生きのびる知恵

日本は「環太平洋造山帯」の中にある国と言われている。「環太平洋造山帯」は、

「太平洋をとりかこむ山地帯。中・新生代の造山運動で形成され、日本列島をふくむ西側では弧状列島」「広辞苑 第六版」より)

と定義されている。つまり、縄文時代といったかなり古い時代から山々がつくられた国であり、今でもその山々の中には「火山」と呼ばれる山が存在しており、地震や火山噴火といった災害に巻き込まれやすい国のことを表している。

昨今でも3.11の巨大地震があり、火山活動でも鹿児島の桜島では活発に活動をしている。これから大きな地震や火山噴火が起こると言われているが、いったいどのようなリスクが存在するのか。本書はそのリスクとその環境の中で生きる知恵を伝授している。
本書の著者と言えば、ビジネス書を読まれているひとであれば「一生モノの人脈術」「一生モノの勉強法」の方、というイメージがあるのだが、あくまで著者の専門は地学、地球科学であるため、本書は著者の専門範囲と言える。

第一章「地震の活動期に入った日本列島」
本書は地震や火山活動について紹介しているが、各章の一部に「婦人公論」という雑誌で掲載された、女優の室井滋との対談も取り上げている。
本章の話に戻す。この3.11の巨大地震をきっかけに、現在でも余震と思われる地震が幾度か起こっている。著者はその地震がきっかけとなって「活動期」に入り、これから地震や火山活動が活発になるのだと指摘している。

第二章「首都直下地震という新しいリスク」
東海沖地震や首都直下地震などニュースではその危険性について度々指摘しており、30年以内に高い確率で起こると言われている。
著者も同様にそのことを指摘しているのだが、その中で予測できないものもある。「陸」を震源とした地震がその一つである。最近でも千葉や茨城、栃木と言った所を震源とした地震も起こっているほどだが、それは未だに予測がつかないのだという。

第三章「M9レベルになる「西日本大震災」のリスク」
M9レベルの地震は東海沖や首都圏直下だけではない。西日本も十分に起こり得ると著者は指摘している。その要因としては東海沖地震や首都直下地震などから連鎖的に起きるところから来ている。

第四章「富士山噴火の可能性も高まった」
3.11の地震は「プレート」と呼ばれる地表と地表の継ぎ目の摩擦によって起こったものである。しかし地震と一重に行っても原因は様々なものがあり、火山による地震もあれば、逆に地震が起こったことにより火山活動が誘発されることさえある。
著者はそのことから「富士山の噴火」の可能性が出てきたことを指摘している。

第五章「なぜ世界で自然災害が増えているか」
日本では地震や火山、台風、そして春の嵐が起こった。しかし日本以外でも様々な災害が起こっている。自然災害ではなくても「異常気象」と呼ぶように、記録的な暑さや寒さ、あるいは雨量といったことが度々起こっている。
この「異常気象」は、

「まれに発生する気象。多くは災害を伴う。気温・降水量などが過去30年以上にわたって観測されなかったほどの値を示す場合、また、集中豪雨・竜巻などの突発的現象や同じ気象が農作物などに被害がでるほど長期間続く場合」「広辞苑 第六版」より)

を指す。「30年」という歴史の中で例がない一方でその対象が100年、1000年と広げてみると、自然災害が多い時期にある、とも見て取れる。

第六章「「長尺の目」で世界を見る」
自然災害によっては村や町が滅びることもあれば、大陸や島そのものが変化することさえあり得る。しかし第五章にも述べたのだが、そのような災害は100年、1000年という長い歴史で起こるものだという。それを見るためには「長尺」という長い目で見ることが大切である。

第七章「科学でできること できないこと」
科学は万能であるが「絶対」ではない。
現在解明している科学でも予想できないこともある。いざ災害が起こると科学的に解明できないほどのことも起こってしまう。しかし科学は「万能」である。今ある科学の力でもって未然に防げる手段、あるいは起こった場合でも対処できる手段は存在する。

第八章「地球や自然とどうつきあうか」
人類は地球や自然に様々な形で使ったり、頼ったりしている。それでいながら「共生」を図りながら生きながらえることができた。しかし時代とともに農耕のストックから、工業のフローの時代へと進み、大量生産・大量消費の時代となった。しかし著者は、これからはそのフローと呼ばれる時代から、ストックと呼ばれる時代に少しずつ進むことを提唱している。

第九章「身体の声を聞いて生きる」
3.11の震災をきっかけに、生きることそのものを考えさせられる事となった。そのなかで自然と人類の付き合い方について述べている。

日本は地震大国であり、火山大国である。未曾有の災害と呼ばれる様なものも隣り合わせの環境にあるとも言える。そのような環境の中でいかに生きのびるのか、そしてどのように付き合えばよいのか、と言う方法もあるのだが、そのほかにも自然災害に対する考え方、あるいは「科学」という考え方を変えるきっかけとなる一冊と言える。