自分自身の趣味として読書があり、そこから2007年に書評を始め、2009年に書評家となった。
書評を始めてからおおよそ2,000冊の本の取り上げてきたのだが、読んだ本はその4倍、つまり8,000冊以上にも及ぶ本を読んだ。多いように見えるのだが、それより多く読んでいる人もまだまだいるため、自分自身では「まだ足りない」という認識である。
私事はここまでにしておいて、私は毎日本を仕入れるために本屋に立ち寄るのだが、行く先々で読みたい本を探しても「ない」と思ったことが度々ある。著者はAmazonレビューの第一人者であり、小さい頃から数多くの本に接してきたのだが、同じような考えであるという。「どうして読みたい本が無くなってきているのか」その理由について出版社をはじめとした本を取り巻く様々な側の問題について取り上げるとともに、出版業界全体の改革のための提言を行っている。
第一章「提言を前に―出版業界は、なぜここまで墜ちてしまったのか?―」
昨今の出版事情は以下の通りである。
1.書籍の売上高は1996年をピークに年々減少している。
2.休刊・廃刊に追い込まれた雑誌が数多くある。
3.にもかかわらず、毎日約200冊の新刊が世に出ている。
4.小さい書店が淘汰され、大型書店が都市部を中心に乱立している。
他にも細々とした問題点は存在するのだが、読者側から立ってみてみると、この4点は主な問題として取り上げられている。
第二章「出版社及び著者への提言―新刊の乱造は、絶対に許すな!―」
新刊の数は年々増え続けている。「出版指標年報」と呼ばれる出版に関する白書によると、第一章の所で書いたように毎日約200冊出ている。
では、なぜ書籍が乱造してきたのだろうか。自分自身が肌で感じている理由として挙げられるのが、「本を出したい人」が増えていること、あと「作家志望」の人が増えていることにある。
前者は自分自身の実績やノウハウをもとに、自分自身のブランドを世に広げたい、俗に言う「ブランディング」である。主に、編集者に売り込むだけでは無く、「出版セミナー」を通じて、あるいは「出版プロデューサー」や「出版コンサルタント」を通じて出版するような人もいる。
後者は「懸賞ガイド」などで掲載されるような小説の「新人賞」に公募を行い、賞をとることで作家デビューを行う人のことである。賞の中には共同出版(出版社と著者で出版費用を折半し、出版すること)と自費出版を持ちかける所もあれば、奨励賞を受賞して高額の小説デビュー講座へ強引に勧誘させようとする出版社も存在する。
第三章「書店及び取次会社への提言―巨大資本の侵略は、絶対に潰すな!―」
毎日書店に足を運ぶ私にとって、面白い書店を探すことある。「面白い書店」の定義は様々であるが、一つ言えるのが、「自分自身の好奇心がかき立てられるか」というのが挙げられる。
色々な書店に行ってつくづく思うのが、「書店の大型化」である。「書店」と一口に言っても丸善や紀伊國屋、ジュンク堂、有隣堂と言った新刊書店があれば、ブックオフをはじめとした古本屋まで存在する。
しかし、書店がなぜ大型化していったのか。挙げてみると、
1.本の多様化
2.建物そのもののモール化
が挙げられる。1.は第二章と関連性があるのだが、読者における本に対する欲求も多様化していることも要因としてある。2.は大型書店に足を運んでみると、大型書店が独立した店舗で経営されている所も存在するが、多くはショッピングモールなどの大型店舗の中に大型書店が建てられていることから「モール化」と定義している。
とはいえ、書店は減少の一途を辿っているものの、個性的な書店、あるいは変化に富んだ書店は未だに生き残っている。もっと言うと大型店にしても閉店したところも存在しており、Amazonなどのオンライン書店も隆盛していることから、大型化ばかりが問題点では無いと言える。
書店に関連してもう一つ挙げられるのが、取次会社であるが、新しい書店を始める場合、取次会社との契約がどうしても必要になる。しかしその契約をする際の契約料が高くなり、書店開店が頓挫してしまうケースもある。本章では報奨金制度もあるが、それも含めて見直すべきだが、それ以前に取次会社と書店の関連性について明示しておく方が良い。
第四章「読者への提言―「売れている」情報には、絶対に流されるな!―」
最近の本について思うのが、ビジネス書をはじめ、多くの本が「わかりやすく」なっている。初心者、あるいは理解できない人がすんなりと理解できるように作られている本が多い。
しかし、色々な本を読んでいる中で、わかりやすくはなったのだが、中身がスカスカな本もあれば、自分自身の鬱憤を吐き出すだけの本も少なくない。
また、著者の名前だけで売れているような本もある。
私自身は売れている本はあまり考慮しない。ただ、「読みたい本を読む」と言うことを念頭にして本を読んだり、取り上げたりしている。
本章では著者なりの読書観、本の探し方について取り上げている。
第五章「その他の提言―出版物の販売ルートは、絶対に潰すな!―」
出版に対する諸々の事について取り上げているが、主に「税金」である。ここは政府・地方自治体をはじめとした提言となっている。出生率から家庭というような所からハコモノ行政についての提言まで様々とある。
第六章「出版業界全体への提言―悪しき体質は、根本からぶっ壊せ!―」
悪しき体質を潰すためには「監視」や「通達」を駆使できる機関をつくる事を提言している。
第七章「最終提言―再販制度及び委託制度は、絶対に撤廃せよ!―」
最後の提言として「再販制度」と「委託制度」について糾弾している。これについては少し説明する必要がある。
「再販制度」・・・「製造業者などの売手がその商品の販売業者に指定した価格で販売するようにさせる契約(再販売価格維持契約、「再販契約」ともいう)。にもとづいて商品を売る制度。但し公正取引委員会が指定する商品に限られている」(「広辞苑 第六版」より「再販制度」と「再販契約」の意味を合体して記載)
「委託制度」・・・簡単に言えば「返品条件付き売買制度」という。一定期間の間、商品を販売する契約である。一定期間が過ぎると商品を出版社・取次会社に売却する。提言の対象となる要因として契約締結を行うと「売上」として計上することができ、受け取った代金も返品のための必要経費として計上することができるため委託販売で売れなくても「利益」になる。(Wikipediaより一部改変)
本章では両制度の撤廃を含め、新しい出版の在り方について提示している。
私自身も出版に関しては興味がある。そもそも書評家をやっているだけに出版志望の方もいれば、出版関係者、著者との関わりがある。そのため出版の裏側について「熟知」とまでは行かないものの、ある程度知っているところも含めて論じてみた。その中で本当の意味で「出版とは何か?」「本とは何か?」と言う根本から見直す必要があるのかもしれない。それは出版界全体についてもそうであるのだが、読者としても自分自身の経験を棚卸ししてみて、趣味も仕事も何もかも取っ払い、再考する時期に入ってきた。そのことを本書、及び幻冬舎ルネッサンスは警鐘を鳴らしていると言える。
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