生命科学の冒険―生殖・クローン・遺伝子・脳

医学の進歩は目覚ましいと言われている。しかし進歩によっては「生命倫理」として疑問を投げかけたり、批判したりするようなことも起こっている。日々刻々と進化をしている、医学、その中でも「生殖技術」や「遺伝子」といった生命科学がどのように進化を遂げていったのか、本書は「生殖」「クローン」「遺伝子」「脳科学」といった分野にて語った一冊である。

1章「生命の始まりの科学―生殖」
「生殖」と言っても、別に性交渉が多様化したとは言っていない。晩婚化し、高齢出産がもはや当たり前のようになった。また子どもを作る方法でも「卵子凍結」もあれば、「代理母」なども存在する。そう考えてしまうと「卵子・精子」といった生殖機能を平気で他人に譲り渡していいのだろうか、という疑念が、人によって生じてしまう。特に代理出産に関しては有名人が訴訟にまで発展した、というケースもあった。

2章「生命を複製する―クローンと再生医療」
もう10数年前の話だが「クローン羊の「ドリー」」が話題になった。これについて、生命科学の観点から偉大なる進歩と絶賛したのだが、倫理的な観点で大バッシング・議論になったことを覚えている。それからと言うもの、「クローン」に関する技術を取り上げることが、あたかも「タブー」のように扱われてしまう。現に日本では2000年に「クローン技術規制法」といった法律で規制されるようになった。
しかし、現実には牛や豚などのクローンは実験されており、実用化に向けて動いているところもある。

3章「私たちの設計図をひもとく―遺伝子」
具体的に時期は分からないが、以前「遺伝子組み替え技術」は画期的なアイデアと扱われてきた。しかし、その技術は忌避されるようになっていた。それは倫理的な観点にしても、健康的な観点、生体への影響、経済問題など様々な要因が挙げられており、今もなお論争が行われている。
「遺伝子」は他にも「DNA鑑定」や「遺伝子診断」の技術も確立しているが、実際に遺伝子は、住所や名前、電話番号以上に重要な個人情報であることから、倫理だけではなく、プライバシーの観点から批判を受けている。

4章「もっともミステリアスな器官―脳科学」
最後は「脳科学」である。「脳科学」とひとえに言っても、ビジネス書のようなものから、心理学に近いもの、本当の意味で「脳機能」について考察を行っているものまで存在する。「脳機能」と言っても、記憶や判断といったものを司るため、それがどのように強くさせる、変化させることができるのかについて考察を行っている。

「生命科学」とひとえに言っても、本書で取り上げたような分野が存在する。しかしその一つ一つは倫理的な観点から批判にさらされているようなこともある。しかし、人間生活にとって画期的なものであることには間違いはない。本書は「生命科学」の「光と闇」について描かれた一冊と言っても過言ではない。