本書が発売されたのは今から3年前の3月である。ちょうどその時は東日本大震災が起こった時期でもあるが、それは置いといて、この時期にはスマートフォン(以下:スマホ)の需要が伸び始め、ガラケー(ガラパゴス携帯、フィーチャーフォンのこと)の需要が低下してしまい、もう滅びるだろうという声があった。その当時から3年経過したとき、スマホは未だに活況を呈しているが、同時に陰りも見え始め、逆にガラケーが復活の兆しを見せたと言える様な状況にある。
本書は3年前と現在、特に3年前のiPhone vs. アンドロイド という「スマホ戦争」と呼ばれた時代を取り上げ、現在の状況を鑑みながら、これからのスマホとガラケーのバランスについて追っていこうと思う。
第1章「アップルとグーグルは何が違うのか?」
3年前当時はアップルが勢いづき、世界のITの覇権を奪取する様相を呈していた。しかしスマートフォン市場も負けてはいなかった。取り分けGALAXYシリーズを売り出してきたサムスン電子がアップルに追いつき追い越せの勢いで躍進してきており、GALAXYを含めたアンドロイドを開発、推し進めていたことにより、アップルとグーグルの対決が起こった。
しかし著者によれば、対立するところは見当たらないという。グーグルはそもそもスマホ中心にするわけではなく、むしろ広告を表示できる媒体が欲しかったと言うところが挙げられる。アンドロイド・スマホを使っていても、ちょくちょく広告を見かけることがある。さらに言うと、スマホを通じた「目指す未来像」もアップル・グーグルとで異なることも指摘している。
第2章「ガラケー黄金時代はなぜ終わったのか?」
3年前当時はスマホの需要が伸び、逆にガラケーの黄金時代が終わり、滅びるのも時間の問題と言われる程になった。しかし現在ではスマホの高機能化が進み、それでいながら使いこなせず、わかりにくい事により需要に陰りを見せたのは否めない。もっと言うとスマホの需要は陰りがあるものの、そこそこにある。というのはネット専用としてスマホを持ち、電話専用としてガラケーを持つという、いわゆる「2台持ち」をする人も出てきている事もガラケー復調の一端を担っている。
第3章「エコシステムをどう作るか?」
「エコシステム」と言っても別に「環境問題に考慮したシステム」のことでは無い。「エコシステム」はIT用語で、
「複数の企業が商品開発や事業活動などでパートナーシップを組み、互いの技術や資本を生かしながら、開発業者・代理店・販売店・宣伝媒体、さらには消費者や社会を巻き込み、業界の枠や国境を超えて広く共存共栄していく仕組み」(コトバンク より)
とある。元々日本はモノづくりの国と言われているが、それだけでは立ち行かなくなってしまっており、国際的な市場競争でも海外から取り残されている。携帯電話業界であればなおさらである。そのため、「エコシステム」の構築が急務であるとしているが、3年ほど経った今でもその動きは見えていないというのが現状であり、依然として瞑想を続けているように思えてならない。
第4章「ニッポン再起動」
ガラケー黄金時代が終わり、スマホと言う名の黒船がやってきて席巻したと思いきや、現在はガラケーが復調の兆しを見せている状態にある。本章の様に「再起動」したのか、と言うと首を傾げてしまうのだが、それでも「日本にしかない」というオンリーワンの形が日本人に馴染んでおり、元の鞘に戻ったというようなことも見て取れる。
携帯電話ほど入れ替わりが激しく、進化のスピードもめまぐるしく速い。そのため、本書を読んでいて、時代後れかなぁという先入観を持ってしまったが、よくよく考えてみると、この3年間でどのように変わっていったのか、ということを知る事のできる「起点」となった。そう言う意味で本書は過去の携帯業界の現状と、その時の展望を知る上で重要な一冊であったと思う。
コメント