なぜ2人のトップは自死を選んだのか

私の地元であるために、このことは頭が痛いといっても過言ではない。元々の発端は相次ぐ特急列車の事故によるものもあるのだが、そのことにより、JR北海道の歴代社長が2名自殺をしてしまった。元々の事故の根元の一つとしてJR労組の存在があるとされているのだが、真相は多くの謎に包まれている。

本書はJR北海道の歴代社長2名が自殺した経緯と、JR北海道の深層について、これまで起こった事故(事件)と共に、著者の取材を行いつつ、あぶり出している。

第1章「胚胎」
JR北海道が隠蔽工作を行っていたのは20年以上も前からだったと、現在のJR北海道社長は本章の中で告白している。20年以上前というと、国鉄が民営化し、JR北海道・東日本・東海・西日本・四国・九州として分割民営化された。その時からJR北海道は財政的に逼迫し始め保線管理もずさんさを増していった。

第2章「堕落」
JR北海道に勤めている労働者の大半が労組に加入しているため、経営の合理化を進めようにも、労組たちの合意無くてしては進められない現状があった。もちろん改革を進めていきたい経営者と、労働環境を改善して欲しい労働者の対立はどこの企業にも存在するのだが、JRはそれが際立っていた。あと第5章の中で詳しく述べるのだが、労組同士の対立というのもJRを堕落させた一つの要因としてあるのだと著者は指摘している。

第3章「呪縛」
元々JR北海道には、「胆振線」「夕張線」「羽幌線」など国鉄時代には37もの路線が存在した。しかし現在では廃線も多くあり、現在残っている路線も14路線しかない。国鉄の時にも存続していた路線の多くは「赤字路線」と呼ばれており、中には「日本一赤字ローカル線」と呼ばれるような路線(美幸線:びこうせん)も存在した。もっとも国鉄時代に作った無駄の「より」がこの時期に返ってきている、という考えの論者もいる。

第4章「傾倒」
廃止路線も多く、赤字が続き、光明が見えない状態にあると謂われがちだが、それでも技術革新は行われた。それがDMV(デュアル・モード・ビークル)の存在である。これは線路でも道路でも走ることのできるものとして注目され、技術者の多くがその開発に勤しんだ。試験的な運転も全国各地で行われ、北海道でも近いうちに取り入れる見込みだったのだが、相次ぐ電車事故により、実用化の見通しが立たなくなってしまった。

第5章「対立」
JR労組と言っても色々な種類がある。「JR総連」や「JR連合」などがある。最も大きく分けると2つだが、傘下を挙げると数え切れないくらいである。その労組同士の対立は私たちの知らない所で激化している。北海道の話では無いのだが、JR福知山線脱線事故の際に「日勤教育」がニュースで大いに取り上げられたのだが、その際に出てきたのも労組の一部であったが、矛先は経営陣だけではなく、別の労組にも向けられていたという。もちろん今回のJR北海道の事故対応についても、マスコミにて労組同士の対立を色濃く映し出しており、対立によって、経営自体も立ちゆかなくなるような事態にまで発展していた。ちなみに本章ではその労組の長にも取材が行われているが、労組対立について「何が悪い」と一蹴した。

第6章「挫折」
JRの路線では赤字路線が続いており、運行だけでも売上は減少しつつあるのだが、札幌駅や旭川駅などいわゆる「ハコモノ」の開発を重視し、売上を伸ばしていった。実際にJR北海道自体は赤字続きであるものの、赤字を和らげている要因としてハコモノやリゾートといったどちらかというと「副業」の好調が挙げられている。

第7章「審判」
昨年の11月に鉄道事故が相次ぎ、国交省が遂に重い腰を上げ、調査に踏み切った。その調査の中でデータの改ざんなどが明らかになり、「再国鉄化」の状態となった。その中で社長交代も起こりつつ、再起に向けて動き出しているが、本当に再起できるのか、依然不透明のままである。

私自身、北海道生まれで22年間育った。北海道の鉄道も大学に入った頃からずっと小樽・札幌、あるいは里帰りとで頻繁に利用していたので、今回のJR北海道の事故は他人事では無いな、と言う考えでいる。もちろん全容を解明して、それで再起して欲しい所であるのは私も同じである。

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