「ふるさと」の発想―地方の力を活かす

自民党はかつて「地方創生」をマニフェストに掲げた。しかしその地方は今、活性化しているのかと言うと、活性化している所もあれば活性化できていないところがあると言いざるを得ない。そんな状況の「ふるさと」の中、所々で試行錯誤を繰り返しながら地方改革を進め、活性化している。本書は現職の福井県知事が地方活性化のために行ってきたことも含めて地方の現状を伝えている。

第1章「地方は、いま」
本章のタイトルからすると地方の現状を悲観的に見るような感じなのだが、実際は福井県がどのような県なのか、そして産業や暮らしはどのようにして変わってきたのか、そのことについて取り上げている。

第2章「地域格差をどう見るか―都市と地方の関係を問い直す―」
いかに一つの地方が活性化しても他の地方が衰退してしまっては地方創生とは言えない。しかし現にそういった現状は往々にして起こっている。特に都市と田舎の格差が顕著に表れている。そのことから「都市は地方に依存している」ように見えるのだが、特に農作物など一次産業、さらには関東でいえば電力のほとんどは地方から取ってきている。そのことから前述の言葉は全く逆で「都市の方が地方に依存している」と言える。また、就職による都市部への移動もあるのだが、その理由として中央政府の「国土政策」が挙げられるという。

第3章「「改革」とは何だったのか―地方からの視点―」
地方を活性化するための改革を中央が行っても、結局のところ中央が得をするような改革になってしまう。そのことから地方が切り捨てられる現状になってしまった。もっとも「地方分権」は今もなお声高に叫ばれているのだが、叫んでいるだけで、結局のところ具体的な議論がなされていない現状にある。ただ昨年の「大阪都構想」のなかで活発な議論があったのだが、結局のところ住民投票で否決された現状がある。

第4章「「ふるさと」という発想―つながりが希薄化する中で―」
しかし不安や恐怖を感じているのは何も地方ばかりではない。都市部でも人とのつながりが希薄化してしまった現状にある。そういった「人とのつながりの希薄化」はむしろ都市部が顕著に表れている。そのような中で「ふるさと」はどのようにとらえなおし、そしてつながりを再生し、深めていったのか、そのことを取り上げている。

第5章「「ふるさと」からの発信―地方からの広がりを―」
ふるさとから情報発信をすることはもはや当たり前のようになってきているのだが、その方法発信の方法も様々なメディアを通じて行うこともある。またアプローチにしてもボランティア活動からふるさと納税に至るまで方法は様々である。

第6章「「つながり」を立て直すために―地方にできること―」
「つながり」を作り直す、あるいは新しい「つながり」をつくり、守っていくにはどうしたら良いか、そのことについて取り上げている。

「ふるさと」はそれぞれの形で試行錯誤を繰り返している。その試行錯誤を繰り返した先には、さらなる進化がある。もちろんそれを行って、活性化した「ふるさと」も存在しており、未だに発展途上にあるふるさとも存在する。そのふるさとの力を活かし、日本を活性化できるか、それはふるさと次第と言える。