失踪者たちの画家

とある画家が行方不明となった恋人を探すために様々な所へ行き着き、数奇な運命や出来事に遭遇するというものである。ミステリーでありながらも、監獄や人形工場など奇怪な場所を転々としながら恋人を探し出すという。

しかし「ただ探すだけ」の物語とは違い、読み進めていく内にめまぐるしく舞台が変わっていく。先述の奇怪な場所もあれば、風景や「都市」も変化しており、なおかつ恋人を探す主人公ならではの「孤独」もありありと映し出している。

人はなぜ「孤独」なのか、そして孤独を打破するために求めていく者とは何か、そしてそれを求めていく姿はどのような情景を映し出すのか、それらの謎が重なって本書でしか見たことのない「個性」が生み出されている。その「個性」のある物語が、ミステリー味を増しているので、良い意味での不思議さを漂わせる一冊である。