1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった

最近のラジオではメールアドレスを伝え、お便りを送ることが多い。いわゆる「メール職人」と呼ばれるような方々であり、その方々が送られるメールによってラジオの魅力がパーソナリティとともに彩っているといっても過言ではない。

しかしラジオは戦前からあり、戦後に至ってはオールナイトニッポンを始めとしたタレントがパーソナリティやDJとして活躍し、そのコーナーを進めていく中でお便りのやりとりは存在した。メールのない時代にやりとりを行ったのかというと「ハガキ」である。そのハガキ職人の中にも後に有名になった人物もおり、AKBグループの生みの親であり作詞家の秋元康や脚本家として有名な宮藤官九郎もその一人である。

本書の著者も「伝説のハガキ職人」と言われるほど数多くのハガキを送り、深夜ラジオを彩った人物である。その人物がどのような人生を送ったのかフィクションではあるものの、自分自身の人生と重ねていることから自伝的小説としてある。ハガキ職人ならではの苦悩とパーソナリティとの接点がよくわかる一冊であった。