伝えることから始めよう

かつて「テレビショッピングの風雲児」として知られ、なおかつ自ら出演し、テレビショッピング業界を席巻に導いた人物がいる。その人物の名は「高田明」。そう「ジャパネットたかた」の創業者であった。その高田氏は2015年まで同社の代表取締役社長を務め、現在ではJリーグチームV・ファーレン長崎の社長を務めている。その高田氏はどのような人生を送ってきて、そして「伝える」ことの大事さを知ったのか、自らの半生を綴っている。

第1章「今を生きる」
著者の生きる指針の一つとして「今を生きる」がある。過去は過去、未来は未来として考えて、今あることを一生懸命に生きることによって、過去にとらわれず、なおかつ未来に翻弄されずに生きることによって、課題や成果が見えてくるようになる。そこから軌道修正を繰り返すことによって、次のステップアップにつなげることができたという。

第2章「どんなこともつながっている」
本章では著者が生まれたときから製作所への入社、さらに父の会社に入社するまでのプロセスを取り上げている。「ジャパネットたかた」としての高田氏、さらに今の高田氏は本章の辿ってきた人生の中でつくり上げられ、つながっているのだという。

第3章「できる理由を考える」
ジャパネットたかた(前身は「株式会社たかた」)ができたのは1986年の1月である。父のカメラ会社の支店から独立し、ラジオショッピング番組をつくり、さらにはテレビショッピングに進出するまでを取り上げている。ショッピング番組をつくるまでに商品紹介を行う際の台本作りから、製作に至るまでの裏話、さらには全国展開ができたエピソード、そして自社スタジオの構築からメディアミックスに至るまでのことも取り上げている。

第4章「伝わるコミュニケーション」
ジャパネットたかたのテレビショッピングは何度か見たことがあるのだが、著者の商品紹介は甲高い声から伝わるようなフレーズが数多くある。テレビを見ていた当初は大学生だったため、お金がなく、欲しいと思ってもなかなか手を出すことができなかったことをよく覚えている。著者自身はその商品紹介で「いかに伝えるか?」ということを意識していたという。さらにその紹介にあたり「世阿弥」の言葉や考え方を取り入れていたことも本書にて明かしている。

第5章「自己更新」
ジャパネットたかたは成長を続けていく一方で苦難もあった。2004年に起こった「顧客情報流出事件」があり、その事件におけるあらまし・裏話かかわらず赤裸々に綴られていた。さらに2011年に起こった東日本大震災に対する思い、さらには過去最高益の更新に対しての姿勢と会社としてのこれからを明かしている。

一代にしてテレビショッピング業界の中心を走り、そして退任後は長崎に根付き、V・ファーレン長崎の代表として経営再建に成功し、さらにクラブもJ1に進出するほどにまでなった。さらに全国で講演も行っており、今年で古希を迎えるのだが多忙な毎日を送っているほどである。その人生はテレビやラジオのショッピングとともにあったと言っても過言ではないのだが、その過言ではない中で順風満帆ではなかったことも本書にてよくわかる。古希を迎えた後著者はどのような歩みを成していくのかもまた楽しみである。