人はなぜ「いじめ」るのかーその病理とケアを考える

今こそそれほど報道されないのだが、かつては社会現象のごとく毎日のようにニュースにて取り上げられた「いじめ」その概念は、平成になるずっと前からあったが、それが社会問題になったのは平成に入ってからのことである。そもそも本書のタイトルにあるように、人はなぜいじめるのか、その本質と医療について語られている。

第一章「日本人と「いじめ」」
本書の著者曰く「「いじめ」は差別」であるという。もちろん「差別」は動物の活動において必ずと言ってもいいほど存在するものであるため、無くなることはない。しかしその「差別」によって「妬み」や「僻み」が生まれ「いじめ」となって発展するケースもあるという。また日本人は協調性・同調性を重んじており、「空気」によって支配されている面も存在することがある。しかもその和を乱すようなことがあると、いじめに発展しやすい傾向も日本人には存在する。

第二章「「いのち」の奇跡に気づく感性を育てる」
「いじめ」をする人・される人ともに自分自身、そして他人の命を考えたことがあるのかと考えるとなかなかそういった意識がないのかもしれない。その重要性を初めて知るのが、取り返しのつかないことが起こった時かもしれないし、もしかしたらそういった考えが欠如し続けてしまう傾向にもある。そういった状況の中でどのように「いのち」を考え、意識づけられるかを取り上げている。

第三章「いま医療にできること」
今、医療現場では「いじめ」についてどう考えているのか、できることとは何なのかを取り上げているのだが、その中でカウンセリングやケアといった観点からのアプローチで問い質している。

「いじめ」についてはこれまで何冊か取り上げてきたのだが、そもそもの「いじめ」の本質は見えてこなかった。本書でもそういった「本質」の一部分は見えてきたのだが、これがすべてではないし、もちろん「いじめ」とは何かを突き詰めていく必要があるということを再認識させられた一冊と言える。