葬偽屋に涙はいらない―高浜セレナと4つの煩悩

生と死を題材とする作品は少なくなく、本書もその一冊と言ってもいいほど過言ではないのだが、そもそも本書の舞台は「葬『偽』屋」とあり、「葬儀屋」ではない。それは「偽装」をして、自分自信の葬儀がどうなるのかというのを見ることができる、そして自分自身にあった「葬儀」の形にするといったことを取りなすものである。

奇怪な業者でありながら、自分自身の「死」を見出すことができ、なおかつ、仕事に関して、さらには労働に関して考えさせられる一冊であった。もっとも「葬偽屋」自体もブラック企業の様相を見せる。社会の在り方と自らの生と死、それを「葬偽屋」の形として表せているところが魅力的である。

もっとも本書のタイトルの一部にある「涙はいらない」と書いてあるのだが、涙を見せるよりも哀愁を見せているような気がしてならなかった。