八幡さんの正体

私の住んでいる鎌倉市には「鶴岡八幡宮」と呼ばれる神社があり、人気の観光スポットとしてある。平日・休日取わずして、毎日のようにお詣りする方がおり、特に年末年始は大混雑する。

鶴岡八幡宮のみならず、日本には数多くの「八幡神社」があるという。その数は神社の中でもダントツなのだそうである。もっともなぜ八幡神社がつくられ、祭祀などはどうしているのか、そのことについて取り上げているのが本書である。

第一章「八幡神話の世界」
そもそも「八幡」はどのような意味を表しているのかというと、
「宇佐神宮の学問を監督した学頭の神吽(じんうん)が、23年を要して、正和2年(1313年)にまとめた『八幡宇佐宮御託宣集』には、天童としてあらわれた八幡大神の託宣があります。

「辛(韓)国の城にはじめて八流の幡と天くだって、我は日本の神となれり」と宣告しました。八幡さんが誕生した神話です」(p.12より)

とある。神話の一つであるのだが、八幡神話としてよく言われる伝説であるのだが、八幡神社、さらには八幡宮の冠した神社は全国津々浦々にあるという。

第二章「天下の宗廟」
そもそも「八幡」はどのような存在だったのかを見ていく必要がある。時代を平安時代に遡って考察を行っている。そこには天皇との関わりはもちろんのこと、征夷大将軍説などがあるのだが、本当のところはどのような存在なのだろうか。

第三章「祭祀と造営」
本書で取り上げている神社の中心には京都府八幡市にある石清水八幡宮を取り上げている。もっとも京都はかつて天皇のお膝元であり、天皇とともに栄えてきた都として有名である。
その石清水八幡宮ではどのような祭礼が行われているのか、祭りの種類とあらましについて取り上げている。

第四章「八幡信仰のかたち」
八幡宮は天皇のみならず、武家との関係も密接に関わっていた。それは平安から鎌倉時代にかけても同様であり、その様々な地において「八幡」と冠する寺社がつくられる要因となった。もう一つの背景にはその関わりとともにある「八幡信仰」であるのだが、その背景とは何かを追っている。

本書を読んでいった中で確かに、全国に「八幡」と呼ばれる神社は数多くあるのだが、それは日本における宗教や伝説と言うよりも「歴史」における背景が色濃く残っている印象が強い。そのことを本書で知ることができたと言える。