厨師、怪しい鍋と旅をする

何とも奇怪な鍋があったものかと思ってしまった。本書はファンタジー小説の類に入るのだが、とある厨師(ちゅうし、料理人のこと)が鍋と出会うことから物語が始まる。しかしながらその鍋は、

「この鍋、作らないでいると人を襲います」(帯紙より)

とある。まるで怪物なのかと思ってしまい、なおかつ敵キャラなのかというと、敵でも味方でもない。単純に料理をしてほしいと言う名の「かまってちゃん」のような鍋の印象が強かったように思えてならない。

本書はその鍋を携えながら、至る所で料理をするという物語であるのだが、そのメニューは中華。ファンタジーでありながらも、中国をモチーフとしているため、中華に傾倒しているようである。料理ができるまでのプロセスは面白いのだが、鍋と主人公との関わりが何ともわからない一冊であった。