クラシック音楽とアマチュア

元々私自身、中学・高校と吹奏楽を、大学ではオーケストラで演奏していた。その名残もあってか、趣味にはクラシックや吹奏楽を中心とした音楽鑑賞がある。

私事はさておき、本書で取り上げる「アマチュア」はアマチュアで活躍する演奏者のことを指している。本書はアマチュアとプロの違いよりも、音楽史における「アマチュア」はどのような立ち位置に変わっていったのか、そのことについて取り上げている。

第1章「コベットの生涯」
本章ではウォルター・ウィルソン・コベットを取り上げている。彼はヴァイオリニストではあるのだが、実はアマチュアであり、趣味が高じて仲間内で室内楽を行ったり、アマチュアコンサートを行ったりと、音楽を「聴く」から「演奏する」ことへの文化を発展させ、なおかつ作曲家たちの意欲を高めることに成功した。アマチュア音楽のパイオニアでもある。その一方で実業家としても成功しており、その成功で得たお金をアマチュア音楽への投資も行ったほどである。

第2章「<ファンタジー>熱(マニア)は何処から―<ファンタジー>と音楽家組合」
コベットの人生は「ファンタジー」と言う言葉がつきまとうのだという。そもそもなぜ「ファンタジー」なのかというと、コベットの作曲のコンペティションを行う際のテーマとしてあげられている。もっとも室内楽曲や器楽曲でも「ファンタジー」が取り上げられるほどであった。

第3章「男性の集いと音楽界の女性たち」
今でこそ女性の演奏者はプロアマ問わずにいるのだが、かつて演奏者は男性だけだった。そもそも19世紀以前の演奏会の絵を見ても男性だけしかいないような絵ばかりある(初めて女性と音楽の演奏に関する絵が出たのが19世紀末に出てきたルノワールの「ピアノに寄る少女たち」の絵からである)。もちろんコベットが当初コンペティションを行っていたときも男性だけだったが、やがて女性の演奏者や聴衆も出てきはじめ、女性だけのコンサートも出てきはじめた。

第4章「兵士に音楽を、音楽家に仕事を―戦時音楽委員会とその周辺」
戦争になってくると、音楽どころではなくなってしまう。しかしながらその戦争の中でも音楽の火を消さないために奔走した方々もいる。兵士たちへ慰問演奏会を行ったり、そのことにより音楽家への仕事を提供したりするといった動きもあった。

今でこそアマチュア音楽は当たり前の様に存在しており、全国各地で演奏会が行われたり、個人的な趣味として演奏に興じる姿もよく見る。そのパイオニアとなったのは本書で取り上げるコゼットであることはあまり知られていない。ただコゼットを起点に音楽は聴くだけでなく、身近に演奏したという功績はあまりにも大きい。