ザ・ウォール

タイトルだけで判断すると、アメリカのウォール街のことを連想するため経済小説かと思ってしまうのだが、そうではない。また壁の向こうのことを描いているのかとも思ったのだが、こちらもそうではない。

実際に本書の表紙には球場のようなものが描かれているのだが、実はこの球場の周りにはオフィスビルやショッピングセンター、ホテルなどが建ち並ぶ球団の「パーク」である。低迷にあえぐプロ野球球団が人気を高めるために、そして強い球団にするために、四苦八苦をするという物語である。

通常「野球小説」と言うと選手の側であることが多く、その次に監督といったものが多い。しかし本書は「球場」が主役と銘打っている。つまりは「球場」を含めた建物のオーナー、さらにはプロ野球球団の社長・オーナーたちが、野球試合の戦いもあるのだが、一人でも多く球場にきてくれるためにオーナーをはじめとした経営者の立場から何をしているのかを描いている。そのため経営者にしかわからない、長い長い「ペナントレース」がここにある一冊と言える。