文化は進化する一方で、廃れるものもある。それはネットでも同じ事である。私が大学生の頃に流行した「フラッシュ動画」も、YouTubeやニコニコ動画誕生と共に、衰退し、2020年にAdobe Flashがサポート終了するまでになくなった(元々あったのはYouTubeで一部視聴できる)。
他にも2ちゃんねるができて隆盛を極めたが、現在は5ちゃんねるへと変わった。ネットの文化そのものも変わっていった。その文化はどのように変化し、なおかつどのように受け入れられ、考えていけば良いか、本書はそのことについて取り上げている。
第一章「ネットカルチャー研究の発展に向けて──ポピュラー文化と参加文化の視点から」
いわゆる「ネットカルチャー」と呼ばれる文化は、現実の文化と同じように変遷を遂げている。もっともネットカルチャー自体はインターネットの概念の進化とともに変わっていると言った方が良いのかも知れない。ネットが一般的に使われ出した初期のころは「ネット書き込み」というと「2ちゃんねる」が主流だったが、後にブログやSNSが生まれるようになった。
第二章「インターネット上のニュースとアマチュアによる草の根的な活動」
今もプロとアマチュアの境界線はハッキリとある所もあれば、それほどないような所もある。業界や種類によってもまちまちであるため、一概には言えない。今となっては著名な新聞社もネット上でニュースを出すようになったのだが、かつてのネットニュースはどうだったのか、そしてそこから流行はどのようにして伝わっていったのかを取り上げている。
第三章「インターネットを通じて可視化されるテレビ・オーディエンスの活動──公共性への回路」
インターネットはテレビやラジオ、新聞などの出版物とは異なり、「双方向」の側面が強い。テレビではデータ放送、ラジオ・出版物でもお便りといったもので双方向性はあったが、それでも片方向の要素が強い。ネットが強くなるにつれて、その世界にも「公共性」が重要視され始めた。
第四章「インターネット上のアマチュア動画に見られる「カルト動画」」
今となってはYouTuberやVTuberの活躍によって、動画を通して、自分自身の表現を行う方々も増えていき、有名人でもその傾向が強くなっていった。ここ最近では「徹子の部屋」でおなじみの女優・タレントの黒柳徹子氏もYouTuberデビューをするのだから驚きである。
インターネット上の動画となるとYouTubeなどの動画共有サイトを連想するのだが、冒頭でも伸びたとおり、かつては「FLASH動画」が盛んであった。特にこのFLASH動画を起点として言葉や概念が流行することも少なくなかった。
第五章「オンライン・コミュニティの多様化と文化現象──「下位文化理論」を手がかりとして」
初期の頃は「2ちゃんねる」だったが、やがてブログへと進み、mixiによるクローズドのコミュニティもでき、そしてTwitter、Facebookといったように次々と文化が生まれるようになった。
第六章「インターネットにおける炎上の発生と文化的な衝突」
今も昔もあるのだが「炎上」と言う言葉がある。特にSNSを使って迷惑行為を拡散したり、問題発言を行ったりといったことで賛否両論を急速に巻き起こすような動きを見せる事を指しているが、主に批判的、暴露的な側面で見られることが多くある。
第七章「ネットスラングの広がりと意味の変容──「リア充」を事例として」
ネットスラングは主に2ちゃんねるやBBSなどの投稿によって広がりを見せて、中には差別的に扱われるものが中心としてあげられる。しかしその中には「リア充」をはじめ一般社会に浸透し、新しい日本語の概念として作られる一翼を担っている側面もある。
第八章「ネットユーザーによるコンテンツへの関与をめぐる批判的考察──2ちゃんねるのまとめサイト騒動を事例として」
ネットによる投稿ができるようになってから、主に「ステマ(ステルスマーケティング)」などで槍玉に挙げられる人も少なくない。他にもインターネットを通した「デマ」を流布するといった動きもあるのだが、もっとも「デマ」はインターネットが出始める前からずっと存在していた。しかしそれが信頼のあるメディアが行っていたというのであれば大問題で、特に数年前にあった「まとめサイト」では騒動になった。
第九章「インターネット空間における「ネタ」の意味──「遊び」の研究を手がかりとして」
インターネットの世界では色々な事をネタにして遊ぶような傾向もある。特に毎年恒例であるのだが、沖縄ではスクという魚がちょうどこの時期が水揚げの時期であるが、毎年ニュースでは「スク水揚げ」として、誤読の面で拡散されるといったこともある(時には沖縄の新聞社が困惑することも)。こういったネタを愉しむこともインターネット上の風潮としてある。
私自身もネットカルチャーに長年どっぷり浸かった人間である。ブログをかれこれ15年やって来ているのだから、色んなネタを拾うことは少なからずある。しかしカルチャーであるだけに、時代と共に変わる部分がある。その変遷を知ることができ、在りし日のカルチャーも思い出させてくれた一冊とも言える。
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