さよなら、わるい夢たち

「悪夢」は決して寝ているときに見る夢の中での悪い部分ではない。現実に起こっていることの中でも重荷となっている部分もまた「悪夢」である。特に昨今の新型コロナウイルスの感染拡大により、さまざまな制限を受けているのもまた「悪夢」としてある。

本書はジャーナリストの観点から、学生時代の友人がどのような立場で、重荷を積まされていたのか、そしてどこが原因で失踪事件へとつながっていったのかを描いている。

この事件の真相を見てみると、社会的な「悪夢」と呼ばれる部分が重なって起こったと言うほかない。現実でも失踪事件は日本のどこかで起こっており、その要因自体が本書の様なことが全てではないのだが、もしかしたらその多くが同じような事で失踪しているのではないかと邪推してしまう。小説であるためフィクションではあるのだが、どうもフィクションに見えない部分も見え隠れする一冊であった。