カミュ伝

小説「異邦人」やエッセイ「不条理」はもちろんのこと、演劇として「カリギュラ」「誤解」といった作品をも生み出していったフランス文学の代表的人物の一人にまで上り詰めたアルベール・カミュ。栄華も極めており1957年にノーベル文学賞を受賞したことでも知られている。

1960年に交通事故で逝去したが、その後もいくつか話題となった。特に2020年あたりから続く新型コロナウイルスの感染拡大において、小説「ペスト」があるのだが、それを予言しているとして報道されたのが記憶に新しい。

もともとカミュの作品は世の中の世情に対して「不条理」との闘いを描いていた。なぜその思想にいたり、なおかつ作品に残したのか、その変遷を追っている。

第1章「アルジェの青春―太陽と死の誘惑」

カミュは1913年当時フランス領だったアルジェリアの出身である。生まれて間もなくマルヌ会戦で父と死別。母子家庭でなおかつ貧しく、さらには母親も聴覚障害があって、読み書きを学ぶ機会も少なかった。やがて学校に入学して貧しいながらも奨学金を受けて高校・大学へと進学していった。

その一方で高校の時に結核を罹患して、死ぬまでその病気と付き合うこととなった。本章のサブタイトルにある「死の誘惑」の理由の一つとして挙げられる。

第2章「闘う新聞記者―現実へのコミットメント」

大学卒業を行うと、様々な仕事に就きつつエッセイなどを発表した。仕事の一つに「アルジェ・レピュブリカン」の新聞記者となり、不正や植民地経営のことを暴いた。またこの時期はナチスドイツとの闘いの時期だったこともあり、「検閲」との闘いもあった。

第3章「衝撃の作家デビュー―『異邦人』の世界」

記者時代にはエッセイの他に、小説も描き始めた。そのデビュー作が「異邦人」である。1942年に敢行され、後のノーベル文学賞受賞の理由として挙げられた作品である。しかしその衝撃的なデビューをよそに結婚や失業、そして病気といったことも起こり、めまぐるしい変化に追われた。

第4章「結核による追放―シーシュポスとは誰か」

ちょうどこの2年前にナチスドイツによりパリを陥落される。また自身も異邦人の発表のところで喀血し、しばらく療養せざるを得なくなった。

第5章「戦争への参加―レジスタンスの日々」

「戦争」というと第二次世界大戦におけるナチスドイツとの闘いにフォーカスされがちであるが、カミュの場合は1944年のパリ解放以降における、思想における「戦争」だった。地下発行のメディア編集を行った際にドイツに対しての協力に対しての議論があった。

第6章「演劇人としての成功―『カリギュラ』の二重性」

第二次世界大戦後には演劇の作成も行い、代表的なものとして「カリギュラ」や「誤解」があり、いずれも成功した。この頃からフランスを飛び越えてアメリカなど海外でも講演を行うなどの活躍だった。

第7章「小説家の賭け―『ペスト』の意味するもの」

その一方で小説家としても大成しつつあった。その時に刊行したのが1947年の「ペスト」だった。とあるフランス植民地における不条理と伝染病と市民の連帯を描いた作品であり、文名を高めた。

第8章「二度の舞台の陰で―『戒厳令』と『正義の人びと』」

小説家の成功と同時に劇作家としての成功も果たすようになった。先述の「カリギュラ」「誤解」は第二次世界大戦中に描いたが、大戦後も積極的に描いており、「戒厳令」や「正義の人びと」はそれぞれ1948年・1949年に発表された。

第9章「ふたつの苦い戦い―『反抗的人間』論争とアルジェリア戦争」

文学的に成功を収めていく一方で、フランスにおいてカミュの立場は次第に孤立化していった。その背景の一つとしてアルジェリア戦争である。第1章にも書いたようにカミュはフランス領アルジェリアの出身であり、立場としては微妙なところだった。そのため政治的発言も曖昧なものになり批判の的となった。

もう一つは「反抗的人間」を発端とした「カミュ=サルトル論争」である。サルトルは哲学者である一方で、カミュと同じ劇作家や小説家でもあったことから、親交があったのだが、この論争を機に絶交した。さらにサルトルはフランスでも影響力が強かったこともカミュの孤立化の一因として挙げられた。

第10章「早すぎた晩年―孤独と栄光の果てに」

カミュは1957年にノーベル文学賞を受賞したが、フランス国内の反応は第9章の背景もあってか冷淡だった。受賞後も孤独であることは変わらず、1960年に友人の運転する車の事故に巻き込まれ、この世を去った。

アルベール・カミュの作品は後のフランス文学に影響を及ぼしたと言えるが、彼の名声は晩年は論争や戦争の影響もあり、ネガティブな意味合いが強かった。しかし没後彼の遺した作品は文学・哲学両方の面で影響を与えたことは間違いない。

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