リヒトホーフェン―撃墜王とその一族

ミリタリーのマニアの中には本書のタイトルにある「リヒトホーフェン」という人物をご存じの方もいるのかもしれない。サブタイトルにもあるようにドイツ帝国の軍人で、とりわけ航空隊での武功が最も有名である。特にアニメキャラのモデルにもなるのだが、それは後述する。本書はその撃墜王と呼ばれたマンフレート・フォン・リヒトホーフェンとその家族を取り上げている。

第1章「撃墜王―マンフレート」

マンフレート・フォン・リヒトホーフェンが活躍したのは、冒頭に「ドイツ帝国」と記載しているように、第一次世界大戦の時であり、その際に航空隊として参戦。全軍人の中で最も多い80機を撃墜した人物として知られ、乗機が紅色だったことから、「レッド・バロン(赤い男爵)」や「赤い悪魔」とも呼ばれた。

余談だがガンダムの「赤い彗星」こと、シャア・アズナブルもこの人物がモデルとなっている。本章ではこのマンフレートの生涯と撃墜王と呼ばれるまでのあらましを取り上げている。

第2章「「英雄」の弟―ローターと「赤い男爵」の伝説」

兄の武功に隠れがちであるが、弟のローター(「ロタール」とも呼ばれている)・フォン・リヒトホーフェンもまた40機超の撃墜を果たしたエースパイロットである。2歳差で年が近かったためか経歴や嗜好も近かった。しかし性格面では荒々しい戦闘を好んでいながらも、慎み深い性格だったのだという。

第3章「女性とアカデミズム―エルゼ」

第1・2章のマンフレート・ローターの遠戚にあたる、エルゼ・フォン・リヒトホーフェンは社会科学者でフェミニズムの研究も行っていた。ちなみにエルゼはマックス・ヴェーバーとの関わりもあるのだが、恋人というよりも「師弟」であり、ヴェーバー自身も愛弟子として扱ってきたという。

第4章「流浪と遍歴の果て―フリーダ」

作家のフリーダ・フォン・リヒトホーフェンは「流浪」と呼ぶに相応しい経歴だった。その夫であるデーヴィッド・ハーバート・ローレンス「チャタレー夫人の恋人」で知られる)との駆け落ちから、イギリス、メキシコへと渡り、アメリカで没した。世界を流浪していく中で世界大戦にも巻き込まれ、どのような作品を遺したのかも取り上げている。

リヒトホーフェンを挙げるだけでも何人もいるのだが、そもそも第1章で書かれているように「男爵」の爵位を有している家である。本書はその中で4人のリヒトホーフェンを取り上げているのだが、歴史的に有名な人物として挙げるだけでも、何人もいる。本書はそのなかで主要な人物をピックアップしたに過ぎないが、続編として「男爵・リヒトホーフェン一族」としてどのような家系を辿ったのかを詳しく取り上げてほしいと考える。