未来からの脱出

SF

周囲が「楽園」と呼ばれている場所でも、捉える人によってはそれが「地獄」と考えることもある。また楽園でも脱出不可能となると、それは「監獄」とも呼ばれる。

本書はとある施設であるが、平穏な日々を送っていた。しかしながらあるメッセージによって脱出ゲームが始まる。そもそも平穏な日々を送っているのだが、どうやってその施設に入られたのか、またその施設はいったい何かも含めて「謎」だった。よくある「井の中の蛙」といった状況で、サラリーマンが、他の世界を知ると自分の世界とのギャップに惑うようなものかもしれない。

主人公たちは仲間を集め、役割を決めて、施設脱出のために奔走するのだが、その奔走していく中で「施設」自体の本性が明らかになるという一冊である。実勢に本書に登場する人物たちは老人で、施設も老人ホームなのだが、その中身はまさにSF作品ならではの技術の塊のように思えてならない。またそれに立ち向かう人たちとのやりとりの姿も魅力的であった。