情無連盟の殺人

本書では「アエルズ」と呼ぶ感情がだんだんと失う病気であるが、実際の傾向として「アレキシサイミア(alexithymia)」がある。アレキシサイミアは認知・感情などを表すのが不得意な「傾向」を示しており、論者によっては「病気」「障害」といった定義をなされるが、本来は「傾向」のみであるため、病気扱いにならない。おそらく著者はその傾向を参考に「アエルズ」と架空の病気として定義しているのかも知れない。

本書はそのアエルズという架空の病気を抱える人びとが共同生活を行う施設で、連続殺人事件が起こる。感情も欲望も失われているのになぜといった所から始まるのだが、そもそも「アエルズ」という病気は「完全に感情が無くなるのか?」と言う疑問符が本書の事件を紐解いていくうちに疑問符が湧いてくる。

アエルズという架空の病気に限らず、病気自体は人の傾向によって進行具合や症状の度合いも変わってくる。そのためある人がアエルズに罹っても、完全に失う人もいれば、ある感情だけが残ってもおかしくない。本書を読んでいってそう思わざるを得なかった。

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