戦争花嫁 ミチ――国境を越えた女の物語り

昨今もロシアとウクライナの戦争が起こっており、戦争とまではいかずとも世界各地で紛争などの争いは絶えない。また歴史の授業の中でも学んだ方も多くいるが、日本でも大東亜戦争、日清・日露戦争など数多くの戦争を経験してきた。

その中で本書で取り上げるのは「戦争花嫁」である。調べてみると、

戦時中に兵士と駐在先の住民の間で行われた結婚に言及する際に使われる言葉で、通常、兵士と結婚した相手のことを指す。主に第一次世界大戦、第二次世界大戦中のものを特に指すが、他の戦争も含む。Wikipediaより一部抜粋

とある。あらましは諸説あるが、日本でも大東亜戦争後に日本人女性がアメリカなどの国々に嫁いだといったことがあった。本書はその中で約650人の日本人女性がオーストラリアに嫁いだ中の一人「ミチ」と呼ばれる女性がオーストラリアに渡り、結婚し、生きてきた記録である。

第1章「オーストラリア人兵士との出会いと結婚」

元々「ミチ」は別の名前であった。その名前は「吉田綾子」である。その吉田綾子が生まれ、オーストラリアに「ミチ」として嫁ぐまでの日々を取り上げている。大東亜戦争後に後の夫となるオーストラリア人兵士と出会い、朝鮮戦争で離れ離れとなり、やがてオーストラリアへと渡っていった。

第2章「アイ ライキ オーストラリア―妻として母として」

オーストラリアへと渡り、家族をつくり、生活を行っていったが、家族ならではの悩み、さらには文化の違うオーストラリアでの問題などの「壁」が立ちはだかった。特に当時のオーストラリアは「白豪主義」が中心で、先住民族を始め、白人以外の民族は迫害されるようなこともあった。しかしオーストラリアでは日本人をはじめ戦争花嫁としての大量移民が行われだした時、緩和せざるを得ない状況になった。

第3章「老いを迎えて」

やがて子どもは成長し、孫にも恵まれた。しかし夫婦の関係は軍の退官とともに亀裂が生じ始め、子どもの一人に先立たれたこともさらなるきっかけ、さらには夫の行動がダメ押しとなり、別居することとなった。そして冷戦が終わると、戦争花嫁にまつわるイベントに参加し、「戦争花嫁」としての気持ちを伝える機会も出てきた。

第4章「子どもたちのまなざし」

ミチの子どもたちはどのような人生を送ってきたのか、戦争花嫁の子どもとしてどのような考えを持っていたのかを取り上げている。

本書の主人公のミチは2015年の3月にこの世を去った。著者とミチの間に深い親交があり、著者自身が友人代表として弔辞も述べた。あれから7年、ミチとの関わりを基にその生涯を、そして知られざる「戦争花嫁」としての生涯を描いたのかもしれない。

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