愛国の起源―パトリオティズムはなぜ保守思想となったのか

「愛国」と言う言葉が出てくると、「右翼」や「右派」「保守」といった言葉と直結する論者も少なくない。もっとも「愛国」は、「自分の国を愛する心」そのものであり、どのような思想であれ「国を愛する」ことを意味している。しかしどういうわけか、その愛国心が、政治主義の「パトリオティズム」となり、保守思想の一つとなっていった。

そもそも「愛国」はどのような歴史を辿り、保守思想へと行き着いたのか、その歴史を本書にて紐解いている。

第1章「愛国の歴史──古代ローマからフランス革命まで」

そもそも「パトリオティズム」はいつ頃から生まれたのかというと、古代ローマ時代にまで遡る。紀元前に活躍した詩人ホラティウスが詩の中で、

「祖国のために死ぬこと(Pro Patria Mori)」

と綴ったことから始まっている。言葉に出ずとも、国、そして王のために尽くすといった考えはホラティウス以前からも存在しており、封建制や戦いの中にある「自己犠牲」の中にも存在していた。

第2章「愛国とは自国第一主義なのか」

愛すべき王、そして国のために戦うといった考えは「パトリオティズム」と言う言葉にしなくても存在していた時代だが、それが揺らいだ出来事があった。「フランス革命」である。このフランス革命の時期にて啓蒙主義の思想家たちが「自国第一主義」「愛国」にまつわる論争を繰り広げた。本章では特にリチャード・プライスとエドマンド・バークとの論争を中心に取り上げている。

第3章「愛すべき祖国とは何か」

「自国第一主義」「祖国愛」といった「パトリオティズム」。その「愛すべき祖国」とはいったい何を指しているのかの議論である。傍から見ると「自分の国だから自国を愛するに決まっている」と一刀両断しかねないが、そもそも「自国」は本当に自分自身が生まれ育った国なのか、というある種哲学的な議論になってしまう。しかしその哲学的な議論の中で「保守的」な観点での「パトリオティズム」が生まれた。

第4章「愛国はなぜ好戦的なのか」

第3章にて生まれた保守思想における「パトリオティズム」はフランス革命の時期に生まれたが、その革命の中で「パトリオティズム」は軍事的にも使われていた。なぜ軍事的に使われたのか、その要因について取り上げている。

第5章「近代日本の「愛国」受容」

日本においても「日本書紀」にて言及しているのだが、「国」そのものよりも「郷土愛」といったニュアンスで取り上げていた。もっとも日本自体の概念はあれど、武蔵国や尾張国など今ある県などの地域が「国」としてあったためでもある。

「パトリオティズム=愛国」といった概念が日本にも来たのが近代になって、日本において欧米諸国の文化・思想が入ってきた時と同じ時期にあたる。どのように受容され、日本にも広がりを見せていったのかを取り上げている。

第6章「「愛国」とパトリオティズムの未来」

そもそも「愛国」や「パトリオティズム」というと保守的な思想としてあげられるのだが、果たして本当に保守的なのだろうか。またこれからの「パトリオティズム」はどう変わっていくのか、その展望を述べている。

当ブログでもこれまで「愛国」にまつわる本はいくつも取り上げてきた。本を取り上げる度というわけではないのだが、それらの本を読んでいく中でそもそも愛国はいつから生まれ、育っていったのかという「起源」的な議論をなされた本は未だ見たことがなかった。もといいつ頃から生まれたのかと言うのも、自分の中で謎に包まれている印象だった。しかしその疑問が全てではないものの、「起源」を知ることのできる一冊であった。

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