臨床心理学小史

「心理学」は私たちの生活にも「心理」を理解する上で大切な学問の一つとして知られている。一方でそのカテゴリの一つである「臨床心理学」はどうかというと、

人間の心理的障害・病理の問題を、心理学的な原理や知識を総合して解決することを図り、そのための理論および技術を研究する心理学の一分野「広辞苑 第七版」より

とある。解決のための「理論」と「技術」を「研究」する分野であるため、問題をもとにした研究の分野である。そこから精神医学や心理検査など私たちの生活に密接する所を解決するための助力となる学問であるため「間接的」に関わっている。

前置きが長くなったが、そもそも「臨床心理学」はなぜ生まれ、一つの学問として確立していったのか、その歴史を紐解いている。

第1章「臨床心理学の成立まで」

この「臨床心理学」の成立を紐解くためには、まずその根源たる「心理学」そのものの歴史を紐解く必要がある。一般的な見解として「心理学」が成立したのは1879年にヴィルヘルム・ヴントがライプツィヒ大学にて「心理学研究室」を開き、自らも心理学者として研究をスタートしたことが始まりとされている。それまでは哲学の一部としてあり、本章でも古代から中世、近世、近代まであった「哲学」の一つとしての「心理学」とは何かを取り上げている。

第2章「成立後の臨床心理学」

心理学の成立後、「臨床心理学」が成立したのだが、その時に「精神分析」も生まれ、やがて、私たちも行っている「知能検査」も生まれるようになった。

第3章「臨床心理学の多彩な展開」

精神分析が誕生した一因としてフロイトの存在が有、そこから、ピネが知能検査をつくった。そしてそこから自閉症やアスペルガー、ロールシャッハ・テストや投影法など心理的な傾向から、心理テストに至るまでの展開を取り上げている。

第4章「臨床心理学の成熟」

多彩な展開を続けていったのだが、やがてその展開も「成熟」する。成熟となった時に、精神医学や心理療法を含め、どのような傾向になっていったのかを取り上げている。

第5章「臨床心理学の新展開」

成熟した臨床心理学が、さらなる成長としての展開を見せる中で、認知行動療法など心理的な療法などが生まれていった。また現在話題となっている「マインドフルネス」といったものもこの新展開にて生まれた。

第6章「日本の臨床心理学史」

日本における「臨床心理学」はどのような歴史を辿っていったのか。その前史として幕末の頃から遡り、知能検査などの展開もあったが、西欧に比べると展開は遅かった。本格的に入ってきたのは大東亜戦争後にてGHQによる教育の科学化により、心理学が入ってきて、さらには「心理学ブーム」にまで発展した。

臨床心理学というととっつきにくく、研究だけの分野かと思いきや心理テストや心理学的な定義のところで大きく貢献している。しかし歴史自体は浅く、日本においては戦後からといった方が正しいのかも知れない。とはいえ、今「心理学」なくしては、私たちの「心」を知り、治すことは難しくなってきている。その足跡がよくわかる一冊である。

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