ジビエを食べれば「害獣」は減るのか―野生動物問題を解くヒント

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ジビエとは、

「狩猟の対象となり,食用とする野生の鳥獣。また,その肉。鶉(うずら)・野兎など。」「大辞林 第三版」より)

とある。狩猟と行っても「シカ」や「イノシシ」といった種類をイメージするのだが、他にもたくさん存在するのだという。本書はその「ジビエ」と「害獣」の関係について考察を行っているのだが、本書で取り上げられる「害獣」は主に「食害」が挙げられる。

1部「陸の獣たち」
1章「どうやって野生生物の被害を防ぐのか」
「食害」の事例は数多くあり、代表的な動物として「シカ」や「ニホンザル」が挙げられる。しかも食害をしている動物の中には国の天然記念物に指定されている動物もおり(奈良公園のシカなど)、食害の根本的な解決は非常に難しい。
本章では「食害」などの観点から、最初に取り上げた「シカ」「イノシシ」の実態について解き明かしているが、イノシシについては生態がまだ分かっていないところもあり、シカの対策は行われているものの、地域によってまちまちである。他にもシカ肉を使った料理でジビエがシカの駆除に貢献できているかについて考察を行っているのだが、捕獲されたシカのうち食肉となるのが少なく、それでいて市販されていても高価で、庶民には手が出せない代物となっている現状がある。

2章「ニホンザルの生態と保全」
「ジビエ」を取り上げているにもかかわらず「ニホンザル」が出ているのも不思議なように思えるのだが、実は本章の冒頭にて「サルもジビエだった」のだという。著者もサルの肉を使った料理を食べたことがあるので、現在もサルのジビエ料理は存在する。
サルのジビエが広まりを見せたらサルの食害やいたずらなどによる被害も少なくなると考えてしまうのだが、シカ同様簡単にはいかない。サルの生態はもちろんのこと、生命倫理や動物愛護の観点から捕獲を含めた共存・保全を行うにしても超えなければならない課題が山積している。

3章「憧れのユーラシアへ」
ジビエを求めて行った先はユーラシア大陸なのだという。本章で取り上げられているのは、多くは中国で、中国にいるサルやジビエ料理について取り上げている。

2部「海の獣たち―鰭脚類(ききゃくるい・ひれあしるい)の生活と保全」
4章「オットセイの回遊調査」
鰭脚類は、

「哺乳綱ネコ目(食肉類)の一亜目。または独立してアザラシ目。アシカ・セイウチ・アザラシの3科の総称で、海棲に適し、四肢は鰭状」「広辞苑 第六版」より)

とある。本書のジビエとのイメージが合わないような気がするのだが、クジラのように多くの魚が餌として食べられている点を考えると「食害」とも言えるのかもしれない。2部では知られざる鰭脚類の実態と共存について取り上げているが、その筆頭として三陸沖にオットセイの回遊調査を取り上げている。

5章「漁業被害とは何だろう―ゼニガタアザラシから考える」
イノシシやシカ、サルによる被害と同じく、海の生物による被害というのもある。「食害」の他にも本章で取り上げられているゼニガタアザラシのように定置網漁の網が壊されるという被害がある。その被害をどうやってなくすかと言うことを考えることも一つだが、実を言うとゼニガタアザラシをはじめとしたアザラシ類は一時期激減し、「絶滅危惧種」に指定されたこともあり、人間との共存の他に、アザラシの保全といった対策が必要である。

6章「繁殖上のオットセイ」
海の生物の絶滅危惧から守るための一つの手段として「養殖技術」が挙げられる。鰭脚類ではないが、マグロなどの魚類なども養殖が進められており、「近大マグロ」は特に有名である。本章ではオットセイの養殖の実態について取り上げられている。

7章「トドの生活」
5章でゼニガタアザラシの被害を取り上げたが、他にもトドも同じように漁具の被害があるという。その被害は年々激化しているのだが、それを食い止めるにはトドの駆除しかないという。しかしトドの生息数は減少しており、根本的な解決方法が見えてこない。
また本章では駆除をした海の生物をいかにしてジビエにするかを取り上げているが、話題となっているイルカについても言及している。

海にしても山にしても生物によって人間の生活において被害を受けることがあり、その解決方法として「ジビエ」がある。しかし本書のタイトルにある問いの答えはどうかというと、「そうとは限らない」と言うほか無く、生物によってはジビエにすらできない生物もいる。とはいえ野生生物の被害を抑えるための一つの手段として「ジビエ」があることには一理ある。

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