世界中は広しと言えど、「温泉文化」を持つ国は少ない。その少ない中に日本があるが、日本ほどその文化が盛んである国はない。もっとも地域活性化のシンボルの一つとして温泉文化がある。
本書は歴史として、原点、未来、復興として「温泉文化」はどうあるべきか、を2人の対談形式にて考察を行っている。
Ⅰ.「温泉的思考をめぐって」
温泉の役割は様々である。地方への観光もあれば、レジャー、あるいは医療などにも役立てられている。
しかし、「温泉」は火山の活動で作られた副産物の一つであるが、現在のように使われ始めたのはいつ頃からなのだろうか。
温泉の歴史はかなり古く、神話の時代にまで遡る。「日本書紀」や「万葉集」などに玉造温泉や有馬温泉などの表記もあるのだという。
Ⅱ.「温泉地の現在」
日本の歴史とほぼ同じくらい長い歴史を持つ温泉ではバブル崩壊以後に進行している「過疎化」に悩まされ、「シャッター街」が目立つようになった。それを回避、もしくは回復すべく、街おこしなどの策を練っている。とりわけ「伊豆温泉」や「熱海」のある静岡県では「温泉ミュージアム」が挙げられる。
Ⅲ.「原点としての温泉」
そもそも温泉の「原点」はどこにあるのだろうか、という考察が必要である。遡る先は「古代四大文明」や「古代ローマ時代」にまで遡る。あたかもマンガ「テルマエロマエ」の舞台である時代に。
Ⅳ.「温泉の未来像をさぐる」
これからの温泉のあるべき姿、それは温泉療法にある「体」としての「癒し」だけではなく、「心」としての「癒し」が必要なのではないかという意見がある。21世紀は「心」の世紀と呼ばれるほどであるため、「心」の充足や癒しを求める声が日に日に強くなっている。
そのため温泉ではパワースポットや森林浴などへの招待も行うほどである。ほかにも温泉による健康づくりを取り組む活動も活発である。
Ⅴ.「温泉からの復興―東日本大震災と東北の温泉地」
2011年3月11日の東日本大震災により、東北・北関東を中心に甚大な被害を受けた。これは温泉も例外ではない。宮城県の「松島温泉」や福島県の「いわき湯本温泉」など温泉の名所がいくつか存在する。そこの地域ではなくても、西日本の温泉などでは震災直後には水位が下がったり、温泉そのものが濁ったりする事象が発生したという。
いま「温泉」の立場からできること、その問いは今でも投げかけられており、その解を出し続けている。
温泉は私たちへどのような役割を担うのか、私たちの社会にどのような役割を担っているのか、本書はそれらを問う「温泉学」の誘いを行う一冊である。
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