欺きの童霊 溝猫長屋 祠之怪

怪談というと怖いイメージがあり、これから寒くなるシーズンとしてはますます背筋が凍ってしまうような状況にもなりかねないので「季節外れ」とも言えるような話かもしれないのだが、本書で紹介される怪談は怖いというよりも「面白い」「心温まる」といったいわゆる「怪「綺」談(かいきだん・怪談と綺談を合体させ、怪談でありながら面白く織り込まれた物語)」と言えるような一冊である。

とある長屋にて亡くなった人の祠(ほこら)にてお参りしたことから幽霊が完治できるようになり、そこから奇怪な物語が始まる。本物の幽霊と出くわすといった怖い話かと思いきや、その幽霊に出くわしたことにより、面白い意味で奇々怪々な出来事に遭遇するようになる。怪談と言うよりも幽霊を通じたコメディといったタッチで描かれているため、怖い話が嫌いな方々であっても楽しむことができる一冊と言える。