昭和特撮文化概論 ヒーローたちの戦いは報われたか

戦後しばらくしてからずっとヒーローものが生まれるようになった。古くは今や亡き作曲家・川内康範氏が生み出した「月光仮面」をはじめ多くのヒーローが生まれた。現在でもヒーローと呼ばれる存在は数多くあるのだが、そのヒーローは報われたのかというと思わず首をかしげてしまう。そのかしげてしまう要因はいったいどこにあるのか、そのことについて考察を行ったのが本書である。

第一章「巨大化したヒーロー」
巨大化したヒーローの象徴と言える存在として「ウルトラマン」がいる。ほかにも巨大化したヒーローは多数存在するのだが、なぜ巨大化が必要なのか、本章では「ウルトラマン」のほかに巨大化したヒーローの代表格として「マグマ大使」も併せて取り上げている。

第二章「旋風巻き起こす「石ノ森ヒーロー」」
石ノ森章太郎は日本を代表する漫画家の一人であると同時に、あるヒーローの生みの親でもある。そのヒーローは初代としては藤岡弘、が演じた「仮面ライダー」である。今となっては数多くの仮面ライダーが登場してきたのだが、その仮面ライダーをはじめとした石ノ森章太郎が生み出したヒーローの姿は子どもたちにどう映ったのかも取り上げている。

第三章「悪の組織の変遷」
ある意味二項対立の様相を見せているのだが、ヒーローには必ずと言ってもいいほど「悪」と呼ばれる存在がある。「ウルトラマン」だとほかの宇宙から来たロボットや怪物、仮面ライダーだとショッカーをはじめとした者たちである。その者たちがどのようにして生まれ、ヒーローと対立していったのかそのことを取り上げている。

第四章「豊かさの歪みが露呈する時代、「川内ヒーロー」再び」
「川内ヒーロー」は冒頭にも述べた通り作曲家であり脚本家である川内康範氏が生み出した月光仮面が最も有名であるが、他にも「レインボーマン」や「ライコウ」などがいる。本章ではその2人のキャラクターがどのようにして当時の社会に向けた歪みを露呈し、指摘していったのかを取り上げている。
本章を読む際に月光仮面のフレーズに、

「憎むな、殺すな、赦(ゆる)しましょう」

の最後の部分が最晩年に

「憎むな、殺すな、真贋(まこと)糺(ただ)すべし!」

に置き換えられている。そのことも本章に手取り上げられるヒーロー像に通じている部分があるのかもしれない。

第五章「魅惑のカルトヒーローたち」
今でこそヒーロー番組は地上波にて日曜朝の早い時間帯に放送されるが、ウルトラマンや仮面ライダーが生まれた当初は夜7時のゴールデンタイムに放送されていた。なぜその時間帯に放送されるようになったのか、そこには「カルト」と呼ばれるような魅力があり、ファンがいるようなヒーローが生まれたのだという。

第六章「アブない魅力の「悪のヒーロー」」
「ヒーロー」は決して正義ばかりではなく、「悪」にもヒーローが存在した。その代表格として「ハカイダー」などがいる。なぜ世の中には「悪のヒーロー」が必要だったのか、そのことについて取り上げている。

第七章「ヒロイン、前線に立つ」
ヒーローは男性がなるものだが、その女性のバージョンとして「ヒロイン」がいる。そのヒロインとしてどのような存在がいて、どのようにして前線に立ったのかを取り上げている。

第八章「ギネス級番組『スーパー戦隊シリーズ』の足跡」
ゴレンジャーをはじめとしたスーパー戦隊シリーズは今でも形を変えながら続いている。その変遷はどのような形であり、なおかつ社会的な出来事とのかかわりを持ったのかを取り上げている。

第九章「冬の時代の『メタルヒーロー』」
ヒーロー番組は続々と生まれてきたのだが、「停滞」と呼ばれた時期があった。それが1970~1980年代にかけてであり、その時期には「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」などのアニメが席巻する時代と重なる。そのような時代の中で生まれたのが「メタルヒーロー」なるものである。

第一〇章「ヒーローたちの応援歌」
今でこそアニソンもメジャーなものになっていったのだが、他にも特撮ヒーローの歌である「特ソン」と呼ばれるような歌も存在している。もちろんそれらもまたヒーローの特色やメッセージをつかみながら歌われているのだが、その歌はどのようなものがあるのかを取り上げているのが本章である。

第一一章「スーツアクターの矜持」
スーツアクターの存在は特に「仮面ライダー」シリーズにおいて人気を博している。初代仮面ライダーのスーツアクターである藤岡弘、氏をはじめ多くの人々が俳優としてのスターダムにのし上がったことも相まったことが要因として挙げられる。

第一二章「平成の時代、ヒーローたちは…」
ヒーローたちがどのようなメッセージを送っているのか、平成のヒーローにも昭和の頃と同じように流し続けている。その一つとして「平和」や「非戦」などがある。ほかにも本章ではクールジャパンのあり方についても問うている。

ヒーローものは今でもテレビで放送され続けている。その続いている作品の中でどのような姿だったのか、その歴史を紐解いた一冊であるが、それが本当に報われているかどうか、そしてその「報い」はどこに向けられているのか本章ではなかなか見えてこなかったのだが、対象は社会そのもので、どのように報われるのかというと悪や疑惑を取り去るといったことを暗に示しているのかもしれない。

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