脳が良くなる耳勉強法

著者は狙って出版をしているのではないかと邪推してしまった。というのは本書が出版された翌月にウォークマンが誕生してちょうど30年を迎えたからだ

ウォークマン誕生によって音楽やラジオを聴く環境というのが劇的に変化した。昔は家や店のなかでしか聞けなかったものがあるいているときにでも気軽に聞くことができるようになった。それだけでも大きな変化なのだが、ウォークマン自体も変化しており、カセットテープだけだったのが、CDでも聞けるようになり、MDになり、そして今ではメモリで大量に聞けるようになったほどウォークマンは進化した。

また音楽のみならず語学勉強にも重宝され、NHKの語学講座を録音しては通勤・通学途中に聞いて勉強をするという光景も見られるほどだった。すなわち「耳勉」というのができた。しかしこの耳勉はウォークマンほど進化しなかったが、オーディオブック誕生により本は読む者から「聞く」ものへと進化を遂げた。

本書の著者は日本最大のオーディオブックサイト「FeBe」の運営者である。また著者はこの耳勉でもって東大に合格した。その耳勉の知られざる凄さについて紹介している。

第1章「私たちは五感で勉強している」
勉強をするというと「視覚」と「触覚」でしかないように思えるのだが、五感をフルに生かす勉強法というのがこれからの時代は重宝される。勉強をするための構成要素を著者は大きく4つに分けている。
1.「情報源」
2.「情報の入力」
3.「情報の記憶」
4.「出力」
特に重宝されるのが4.の「出力」である。最近ではパソコンのみならず携帯電話など、アウトプットツールが増えているため容易にできる。それと同時にどのようにアウトプットするのかというのも大事になってくる。
そして最後には、
5.「不足している情報を認識し、フィードバックを行い、また1.に戻る」
このサイクルによって勉強の効率は最大限に増大する。

第2章「音で脳の個性を生かす」
ここから耳勉の本懐について迫っていく。
著者は苦手なことに集中できなかった過去があった。そのことから他人より学習速度が遅れ、次第に平均を大きく下回るようになってしまった。その時に出会ったのが「耳勉強法」である。さっきまで行っていた「耳勉」とはまさにこれのことを言っている。
脳の働きというのは個人差が激しく、同じ働きをしている人というのはほとんどいない。そこで脳の働きに合わせて個性を育てる勉強法には「耳勉」が生かされる。
本章では脳科学の観点からみた「耳勉」の強みというのを余すところなく紹介しており、さらに五感のなかで最も優位感覚はどこなのかという「優位感覚チェックテスト」の簡略版を掲載している。自らどの感覚がいいのかというのが一目でわかるので、非常にありがたいところである。

第3章「耳勉強法を始めよう」
本格的に耳勉のやり方、そして耳勉の種類という所について紹介している。
本書の著者が運営をしている「FeBe」というサイトはオーディオブック中心であり、とりわけビジネス本のオーディオブックに特化をしている。それだけではなく読みづらい文芸作品やニュース、講演録に至るまで置いてある。
オーディオブックにも種類があれば、聞き方にも種類がある。例えば歩きながら、仕事をしながら聞くという「ながら聞き」、集中して聞くこともあれば、文章を追いながら聞くというのもある。一度聞くだけでも得るものは多いのだが、それを強固なものとしていくために何度も聞くというのもある。
「耳勉」と言うだけでもたくさんの聞き方と、ツールが揃っているため飽きることはない。

第4章「耳勉強法を実践しよう」
ここではオーディオプレイヤーの選び方から、ヘッドホン・イヤホンの選び方、さらにはオーディオブックサイトから、倍速ツールに至るまで耳勉のより多く、深く、楽しく実践できるツールが目白押しである。

本書はウォークマン誕生から30年の節目として相応しい一冊と言える。これからウォークマンというのがただ単に「音楽を聴く」という所から「本を読む」もとい「本(の内容)を聴く」という形態に進化するのではというのがあるからだ。私も「FeBe」のサイトの一利用者であるがオーディオブックのみならず
「耳勉」は大きな可能性を秘めている。これからどのように浸透していくのかが楽しみである。

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