藤巻流 実践・巻き込み術

本書の著者である藤巻幸夫氏は数々の人を巻き込みながら福助の再生に尽力し、ファッション業界に大きな旋風を巻き起こし、今となっては「伝説のカリスマバイヤー」と呼ばれるまでになった。現在は兄弟で共同経営をする株式会社「フジマキ・ジャパン」の代表取締役副社長に就任している。その一方で様々なショップを展開するなど、東奔西走の毎日を送っている。その中でも数多くの「巻き込み」を行いながら当人は楽しく仕事をしていることかもしれない。
本書は藤巻氏ならではの巻き込み術がギッシリと詰まっている。

第1章「ホスピタリティで巻き込む」
良くビジネス書では「ホスピタリティ」という言葉が良くつかわれるが、これは一体どのような意味で語源はどこからきているのだろうか。
「ホスピタリティ」は簡単に言えば「思いやり」「もてなし」のことを言う。しかしもてなしと言うと「サービス」と言うのもまた「もてなし」になるが双方と決定的に違うのは、「サービス」は上下関係がはっきりとしている「主従」によるもてなし。「奉仕」と言うのもそれに近い。一方の「ホスピタリティ」は立場上「対等」なところから「もてなす」ことを行う。英語では「hospital(病院)」などに発展していった。
「ホスピタリティ」は何か高貴な響きがあり、とてもまねできないという人もいるように考える人がいそうだが、本章での「ホスピタリティ」は誰でも実行が可能である。「メールに際立たせる一言を入れる」「笑顔で接する」「悪口を言わない」といったものはあたりまえと思っていてもいざやってみるとあまりやらない。心がけひとつで巻き込むことができ、他人にとっても悪い気はしない。

第2章「言葉とエネルギーで巻き込む」
言葉と言うのは時として、重要な活力源になったり、人格や心をも傷つける鋭利な刃になる。
本章ではほめ方のみならず「叱り方」、そして感脳の込め方を駆使して人を巻き込ませていく術を紹介している。
藤巻氏は非常に冗舌であるというのは存じており、藤巻兄弟の共著にもそれに関するエピソードが紹介されているほどである。
それだけではなく行動することへの情熱といったものまで言葉とエネルギーについて縦横無尽に書かれている。

第3章「時間を管理して巻き込む」
巻き込むということは相手への配慮も必要であり、とりわけ時間管理というのがネックになりやすい。「時間管理」と言うと「速攻」と言うように早め早めのレスポンスや行動といったものが大切になるが、それだけでは時間管理とは言えないと藤巻氏は釘を刺している。それを強調しているのは本章の最後のところであり、料理の注文、美術館に立ち寄る話などを交えながら、時間における緩急の重要性について主張しているところは、「スピード重視」と言われ続けた仕事術に関して、一種の清涼剤と言うべきだろうか。ビジネスにおいてスピードは大事であるが、時として「スロー」になる時を作る必要がある。それはビジネスのみならずプライベートにおいてでも、であろうか。

人を巻き込む力と言うのは誰にも備わっているが、それについて気づける人と言うのは悲しき香奈少なく、私も人を巻き込む力があるのかというのはいまだに悩みの種である。社会人2年目の超若輩者であるが等身大の巻き込み方と言うのが本書にはある。社会人2年目であったとしても、社会人2年目なりの「巻き込み方」と言うのがあるので、巻き込みに対して敷居が高いと思った人でも実践できる。