なぜ僕は理科を好きになったのだろう?

最近「理科離れ」と呼ばれて久しいが、そうさせてしまっている要因の一つとして、科学の楽しさを学べる一方で理論や計算式、定義といったものばかりが教えられるという学校特有の現状がある。小学校のころまでは科学をする楽しさというのがあったのだが、だんだんそれが気難しいものになり、高校に入るともはや何語だかわからないという人も出てきたことである。
物理や化学、生物に地学は用語や方程式といったものは欠かすことはできない。しかしそれを学べば学ぶほど楽しさというのを忘れてしまっているように思えてならない。

本書はそんな理科に魅入り、「空想科学読本」という有名なシリーズまで書かれた柳田氏が、自身が体験した理科の魅力、そしてそれに魅せられた理由を「なぜ?」形式にして熱く語っている。

Chapter1 「なぜ最初の「なぜ?」は生まれたか?」
理系は「仮説」と「検証」によって様々な発見や定義と言うのが形成される。良く学術やビジネスの世界で「論理的」と呼ばれるルーツは数学からきており、「論理数学」という学問が存在するほど、理系と「なぜ?」と言うのは精通している。
著者は早くから読書に目覚めただけではなく、様々なことにも興味を持ち始め、次第に「なぜ?」という言葉が出てき始めたという。
発明家として有名なトーマス・エジソンも教師や親に対していろいろなことを「なぜ?」「どうして?」と訊きまくったという。しかしそれが故に小学校を退学させられたという逸話もある。

Chapter2 「なぜ風船は浮かんでいるのか?」
「なぜ?」独楽が回っているのか、「なぜ?」風船は浮くのかということから科学者の道を志したことついて書かれている。

Chapter3 「なぜ物理にシビれたのか?」
私は高校の時に理科系の科目を習ったものでは「化学」と「生物」しか学ばなかったため、物理のつまらなさと言うのは良くわからない。しかし化学においてもつまらなさは匹敵しており、予習しなければ何を言っているのか分からなかったということは覚えている。
著者は物理のみならず地学も学んでいた経緯があり、それによって「なぜ?」という考え方が膨らみ始めたという。

Chapter4 「なぜ東大に幻滅したのか?」
著者は当初、日本ではじめてノーベル賞に輝いた湯川秀樹の愛弟子である佐藤文隆教授のもとで学ぶために、京大入学を志した。しかし入試に失敗し一浪。さらに佐藤氏が京大を退官した。そのことからか、志望校を東大に移し猛勉強の末、東大に入学した。しかし当初志望していた物理学科には行けず東大や科学に関しての意欲を失ってしまった。5年間在学したものの中退し、塾講師となった。しかし科学者としての道が開けたのは「空想科学読本」であった。数々の「なぜ?」を追い求めてきたからでこそ開いた大輪の花と言える。

経歴を観るように柳田氏は科学者として博士といった学歴を持っていない。しかし水から科学者という志をあきらめなかった、そして常々「なぜ?」という問答を続けていったからでこそこの「空想科学読本」が大ヒットし、シリーズ化した。そしてこの「空想科学読本」は「なぜ?」に対する思いと探求心が続く限り、その道は終わらない。